(Foreign Correspondent 1940年 アメリカ)
サスペンス映画の神様、アルフレッド・ヒッチコックが製作基盤をイギリスからアメリカに移し、アカデミー作品賞に輝いた『レベッカ』に続き製作したハリウッド第二作目。
主演は、後にサム・ペキンパー監督の傑作西部劇『昼下りの決斗』に出演するジョエル・マクリー。
あらすじ
第二次世界大戦が開戦する直前のロンドンに、アメリカから新聞記者のジョニー・ジョーンズが特派員として派遣されて来る。
戦争回避の鍵を握るのオランダの政治家ヴァン・メアに取材をするため、ジョニーは平和運動家のフィッシャーが開催するヴァン・メアの歓迎パーティーに参加するが、ヴァン・メアは急用で姿を消してしまい、代わりにジョニーはフィッシャーの娘キャロルと知り合う。
続いてアムステルダムで開催される平和会議で再び接触しようとするも、ヴァン・メアはジョニーの目前で何者かによって射殺されてしまうのだった。
感想
戦争は回避できるのか?
ヨーロッパの情勢を取材するために派遣された新聞記者が、開戦を巡る陰謀に巻き込まれて行く、いかにもなヒッチコック的なサスペンス映画。
流石に古さを感じる部分が多い事は否めないが、それでもストーリー的にも演出的にも面白いところが多く充分楽しめる。
ヴァン・メア暗殺を目撃してしまったジョニーが犯人を追う。
雨の中逃げる犯人は傘をさす群衆を掻き分けて進むのだが、犯人の姿は見えないが傘が揺れる事で居場所が分かる。
群衆を抜け出した犯人をジョニーが再び追うが今度は路面電車に阻まれる。
仲間の車で逃走しようとする犯人に縋り付くが振り落とされるジョニー、後ろから来た車が間一髪のところで急停止。
犯人を追うため一台の車を捕まえると、そこにはキャロルの姿が。
キャロルたちと一緒に犯人を追うジョニー。
明らかに背景が動いているだけの合成なのだが、背景の動かし方でこんなにも躍動感が出るのかと驚かされる。
このスリリングな展開のチェイスシーンに、突然コミカルなシーンが挿入される。
一人の老人が家を出て道を横断しようとするが、逃走する犯人の車、追いかけるジョニー達の車、そして警察車両の列と次々に遮られて、遂には諦めて家の中に戻ってしまうという、まるでチャップリンの映画かドリフのコントの様だ。
スリリングなシーンに挿入されることによって余計に笑えるし、コミカルなシーンが挿入されることによって緊張感のあるシーンが一層際立つ。
その後犯人が逃げ込んだと思われる風車小屋へ侵入するジョニー。
犯人達に見付からないよう身を隠し、何度も見付かりそうになるハプニングを、間一髪のところで回避していく緊張感。
よくある展開だが見せ方が上手い。
重大な秘密を知ってしまったジョニーは、水車小屋を出て警察を呼びに行く。
警察を連れて水車小屋へ戻るがもぬけの殻。
よくある話だが、謎が深まりハラハラする。
と思ってたら、割りと早い段階で明らかになる意外な黒幕。
嘘でしょ!?まだ中盤ですよ。
と思わせておいて、話はまだまだ面白くなる。
黒幕に雇われた殺し屋が、塔の上からジョニーを突き落とそうとする場面。
突き飛ばそうと忍び寄る度に邪魔が入り、何度もやり直す。
観てる人間は気付いているが、当のジョニーは気付いていない。
「志村、後ぉ〜!」と叫びたくなる緊張感。
この場面が、道を渡ろうとして渡れない老人と対比になっていて余計にスリリング。
本作が製作されたときには既に第二次世界大戦は始まっていたので、戦争が回避できない事はわかっている。
この物語はどの様にオチを付けるのかと思って観ていたら、まさかのスペクタクル・シーンが待ってました。
CGなど無かった時代に、アイデアを駆使して撮影されたであろうこのシーン迫力は本当に驚き。
出来れば大画面で観たかった。
ジョニーが何度も帽子をなくすのと、新聞社の社長がジョニーの名前を「ハントレー・ハバーストック」と名乗らせるのは、絶対何かの伏線だと思って観ていたのだが、結局何もないまま終わってしまったような・・・。
それとも、わたしが伏線回収に気付かなかっただけ?
謎は深まる・・・。