村上春樹の短編小説『納屋を焼く』を原作に、『ペパーミント・キャンディー』『シークレット・サンシャイン』のイ・チャンドン監督が映画化。
出演は、『ベテラン』のユ・アイン、T Vシリーズ『ウォーキング・デッド』のスティーヴン・ユアン、新人のチョン・ジョンソなど。
あらすじ
アルバイトをしながら小説家を目指す青年ジョンス(ユ・アイン)は、偶然幼なじみのヘミ(チョン・ジョンソ)と再会する。
ヘミは、アフリカに旅行に行っている間飼っている猫に餌の世話をして欲しい言う。
ジョンスは、ヘミが留守の間、彼女のアパートへ通い猫に餌を与えるが、猫は全く姿を現さない。
やがてヘミはアフリカで出会ったという謎の男ベン(スティーヴン・ユアン)と共に帰国する。
ある日、ヘミと共にジョンスの家を訪れたベンがある告白をする。
『僕は時々、ビニールハウスを燃やしています。』
その後、突如としてヘミが姿を消してしまう。
感想
「意味ありげ」なシーン、「意味ありげ」なセリフが点在しており、先が気になって仕方がない。
静かな語り口なのに、2時間半の長尺を一気に見せる不思議な魅力の詰まった映画。
最後に「結論」は出るが「答え」は出ない。
観終わった後、心にモヤモヤが残り色々と考えてしまう。
わたしの大好きな「観る人によって解釈が変わる」タイプの映画である。
「意味ありげ」と書いたのは、わたし自身が意味を見いだせてないから。
この数々の「意味ありげ」をどう解釈するのか?
果たして全てに意味があるのか?
ヘミがミカンを食べるパントマイムを披露する際に言っていた「ミカンが”ある”と思うのではなく、”無い”事を忘れる」というセリフ。
お腹を空かした「リトル・ハンガー」と、人生に飢えた「グレート・ハンガー」の話。
ジョンスの家に掛かってくる無言電話の謎。
姿を見せないヘミの飼っている猫ボイル。
ヘミが幼い頃井戸に落ちたことがあるいう話は本当か?
そもそも本当に井戸はあったのか?
ベンは「ビニールハウスを燃やした」のか?
そしてヘミはなぜ姿を消したのか?
謎だらけで、ほぼ謎のまま終わってしまう。
「答え」は観るものに委ねられる。
ジョンスが最後に出した「結論」は正しかったのか?
このモヤモヤが受け入れられない人は観ない方が良い。
映画にスッキリした「答え」を求める人には不向きだと思います。
観てる人と一緒に終始モヤモヤを抱えているのが、主人公のジョンス。
そしてモヤモヤの原因は、スティーヴン・ユアン演じる謎の男ベン。
『ウォーキング・デッド』のグレンの時は、良い人の代表みたいな役だったのに、この作品では全身から怪しい雰囲気を醸し出している。
もうグレンの面影はありません。
ヘミを演じるチョン・ジョンソも良い。
なかなか良い味を出してたので、他にどんな作品出てるんだろうと調べてみたら新人だということでビックリ。
脱ぎっぷりも良いし、今後が楽しみな女優さんです。
好き嫌いが分れる映画なので人には薦め難いですが、観終わった後に誰かと話したくなる作品であることは間違い無いと思います。