(Bohemian Rhapsody 2018年 イギリス・アメリカ)
9月5日はフレディ・マーキュリーの誕生日。
という訳で、『ボヘミアン・ラプソディ』。
ラミ・マレック、 グウィリム・リー、 ベン・ハーディ、 ジョゼフ・マゼロの4人が見事にクイーンを再現。
監督はブライアン・シンガーのみクレジットされているが、実際には撮影終了2週間前に解雇されており、その後は俳優でもあり本作の制作総指揮にも名を連ねているデクスター・フレッチャーが引き継いだ。
ラミ・マレックは、ゴールデングローブ賞、全米映画俳優組合賞、英国アカデミー賞で主演男優賞を受賞。
2018年度のアカデミー賞では、作品賞こそ逃したものの、主演男優賞、編集賞、録音賞、音響編集賞の4部門を獲得。
あらすじ
ペルシャ系移民の青年ファルーク・バルサラ(後のフレディ・マーキュリー)は、ファンであるバンド「スマイル」のライブ後、自分の作った曲を売り込みに行き、ロジャー・テイラーとブライアン・メイに出会う。
そこでヴォーカルが脱退したことを知ったファルークは、今度はヴォーカリストとして自分を売り込みメンバーに加入。
フレディと改名したファルークは、同じく新メンバーのジョン・ディーコンと共に新生「スマイル」としてステージに立つ。
『ボヘミアン・ラプソディ』はここが最高!
オープニングが最高!
もうオープニングというか、その前のフォックス・ファンファーレからテンション爆上がり!
いつもと違うドラムの音色で「あれ?もしかして?」と思ったところに、ピックの代わりに硬貨を使った、あの独特のギター音が聞こえてきて確信に。
なんとロジャー・テイラーとブライアン・メイの演奏によるフォックス・ファンファーレではないですか!
何という遊び心。かっこ良すぎ!
もう劇場では聴くことが出来ないかも知れないフォックス・ファンファーレ。
FOXがなくなる前に本作が公開されて、本当に良かった。
そしてオープニングは、「ライブ・エイド」の会場へ向かうフレディ・マーキュリーを映し出す。
BGMは『Somebody To Love』。
しかも、「Can anybody 〜」のコーラスからではなく、その後のピアノ演奏から始まるのがメチャメチャかっこ良くて、マジで鳥肌が立った。
もう既に名作の予感。
誕生秘話の数々が最高!
もうその後は、クイーンの名曲のオンパレード何ですが、その曲達が生み出されて行く過程が描かれているのが、非常に興味深かった。
自主制作で『SEVEN SEAS OF RHYE』をレコーディングしている時の、ハチャメチャな学生のノリみたいに見えて実は革新的な事やってるとことか、『BOHEMIAN RHAPSODY』で、ロジャーが何度も高音パートを歌わされてキレそうになりながらも完成したものを聴いてメンバーが納得してしまうとことか、全て明確のビジョンの基に行なっているフレディの天才性を良く表せていた。
そう言えば『BOHEMIAN RHAPSODY』のエピソードで、「こんな曲は売れない。車で大音量で流し、頭を振れない。」と発売に反対していたプロデューサーを演じていたのがマイク・マイヤーズで、実は彼はその昔『ウェインズ・ワールド』って映画で『BOHEMIAN RHAPSODY』を大音量で流しながらヘッド・バンキングしまくっていたっていう・・・。
こういう洒落が効いているところも最高!
名曲誕生エピソードについては、フレディのものばかりでなくブライアン・メイの『WE WILL ROCK YOU』やジョン・ディーコンの『ANOTHER ONE BITES THE DUST』も取り上げていて、クイーンのメロディ・メーカーはフレディだけじゃないんだぞってところが描かれていて好き。
ロジャー・テイラーの『I'm In Love With My Car』だけネタ的に扱われてい笑った。
曲じゃないけど、フレディのデビュー・ステージで『Keep Yourself Alive』を歌うときにマイクのポジションが決まらなくて、振り回しているうちに先だけ抜けて誕生したのが、あのフレディの独特のスタイルだっていう無理矢理なエピソード、絶対に史実とは異なるんだろうけど映画的には有りだと思います。
サントラが最高!
劇中で使われている曲については、クイーンの歴史を描いている映画なので、基本的に時系列に沿ってその時々の曲が使用されているが、1曲だけ「ライブ・エイド」以降に発表された曲が使われている。
フレディが、ひとりエイズに侵されてしまった自身の行く末を案じているシーンに流れる『Who Wants to Live Forever』だ。
「誰が永遠に生きたいなんて思う?」と歌うこの美しい曲は、もう長くは生きられないと悟ったフレディの悲しみや覚悟や、その時の彼の色々な感情を表している気がした。
この曲に限らず、劇中で流れる曲はどの曲も、その時その時のフレディの心情を表しているように感じた。
本名を捨て、自分がゲイである事を意識し始めた頃に作った『BOHEMIAN RHAPSODY』、それでも愛するメアリーさんに捧げる『Love Of My Life』、バンドに縛られる生活に疲れ始めた時の『I Want To Break Free』、自分から去ったバンドに戻りたいとメンバーに告げる前の『Under Pressure』、まるでミュージカル映画のようである。
しかし、ミュージカルはストーリーに合わせて歌を作るが、本作の場合は歌が先に存在している。
しかも、歌に合わせてストーリーを「創って」いる訳ではなく、事実に基づいた物語に楽曲がピッタリとハマっているところは奇跡的ですらあると言える。
メアリーさんとの愛の物語、そして家族の愛の物語が最高!
クイーンの曲が素晴らしいのは、当たり前と言えば当たり前の話。
本作の素晴らしところは、そのドラマの部分にも大いにある。
差別的に扱われる自分のルーツを隠したがるフレディと父親の確執。
誰よりも愛しているはずのメアリーさんを「愛せない」という矛盾。
人種的にも性的にもマイノリティだったフレディの苦悩は、わたしには想像することも出来ない。
劇中では生涯の恋人ジム・ハットンと出会い、父親とも和解し、メアリーさんとも友人として良好な関係を保ち、「ライブ・エイド」の成功でフレディは人生のピークを迎える。
余談ですが、わたしは長年クイーン・ファンを名乗って来ましたが、恥ずかしながら今までメアリーさんの存在を知りませんでした。
彼女について知れた事も、わたしにとっては非常に大きな物でした。
ライブ・エイドのシーンが最高!
これについては公開前から至る所で語られているので、「今更何を」と思われるでしょうが、やっぱりこのシーンはテンション爆上がりなのです。
クイーンを演じる4人の再現度は素晴らしいし、これは劇中全てに言える事なんですが、何と言ってもフレディ本人の音源を使ってるのが最高!
『ロケットマン』の様に、俳優さんが新たに録音するのも良いけど、クイーンの歌に限ってはやっぱりフレディに歌って欲しいのです。
実は、個人的に一番感動したのは『RADIO GA GA』のサビでオーディエンスが、頭上で2度クラップしてから両手を開く、クイーンのライブではお馴染みの動きをしているシーンで、実際の「ライブ・エイド」でもそうだったんですが、他の出演アーティストのファンも大勢いる中、会場のほぼ全員が「クイーンのお約束をやっている」と思うと、クイーンの偉大さを実感せずにはいられないのです。
よく見ると、「I ❤︎ U2」と書かれたゲーフラを振っているファンもいて、その再現度と言うか、スタッフのこだわりが凄いと思います。
エンディングが最高!
「ライブ・エイド」のクイーンのステージが終わったところで映画も終わるのが良い。
一番良いところで終わることで、却って余韻を感じる様になっている。
しかし、本当に最高なのはその後、エンドロールの選曲である。
まず『Don't Stop Me Now』。
ライブが終わり、映画が終わったところで、「今は良いところなんだから、止めないでくれ」っていうのは、フレディの気持ちであり、観ている我々の気持ち。
選曲したスタッフは本当に「分かってる」と思いました。
からの『The Show Must Go On』である。
もう号泣。
映画館が明るくなっても、しばらく立てなかった。
これはズルい。意表を突かれた。
この曲は、フレディが亡くなる前に発表した最後のアルバムから、亡くなる直前にシングルカットされた生前最後の曲。
年代が違うので、この曲が使われるとは思ってなかった。
選曲したスタッフは本当に「分かってる」。
今年で没後29年。
まだまだ「ショウは続く」!
何と言っても、ブライアン&ロジャー公認なのが最高!
実際にあそこまでのメンバーの確執があったのかとか、フレディがエイズの告知を受けたのはもっと後だったとか、あそこが違う、ここが違うと、粗探しの様に史実と違う箇所を探す人がいる様ですが、あくまでも映画なので、約2時間の中で物語を収めようとすれば、そりゃあ多少の味付けは有りますよ。
誰が何と言おうと、制作にも名を連ねているブライアン・メイとロジャー・テイラーが「これで良し」と言ってるんだからイイんです。
劇中でロジャーが言っていた様に、フレディは「伝説」なんです。
本作は、フレディの伝説を現代に、そして後世に伝えるための映画なんです。
正直言って、公開前は「今更クイーンの映画なんて創っても、オールド・ファンしか観ないんじゃないの」と思ってました。
しかし蓋を開けてみたら、予想外の大ヒット。
若い人達が、クイーンを「知る」どころか「夢中」になった。
おじさんは、それが一番嬉しかった。