(ANNA 2019年 アメリカ・フランス PG-12)
公開当時、「またそれかっ」と言われた程、リュック・ベッソンお得意のヒロイン・アクション。
特に、今作は女性スパイのお話と言う事で、どうしても美しき暗殺者を描いた1990年の『ニキータ』と比較せずにはいられない。
果たして30年の時を経て、ベッソンが描くヒロイン・アクションはどの様に進化したのか?
結論から言えば、よりスタイリッシュに、より派手に、そして複雑な構成がラストに向かって収束して行く気持ち良さを味わえる一本でした。
物語は、1985年のモスクワ、KGBが潜入中のCIAスパイを次々と始末するところから始まる。
5年後、市場で働いていたアナはモデルにスカウトされパリへ。
そこで、モデル事務所の共同経営者の男に見染められたアナは、ある日彼が裏で武器の密輸をしている事を告白されると彼を突然射殺する。
この二つの出来事が徐々に繋がり、先の読めない展開が続く。
何度も時間を前後しながら、実はあの時・・・、というパターンが繰り返されるが、これが意外に気持ち良い。
同じシーンを別角度から見ると、違う展開が起きていたり、何気無い動作に大きな意味があったりと、非常に上手い構成だと思いました。
最初の任務で、ワザと窮地に追い込んで腕を試されたり、バスルームで水の流れる音を立てながら隠されている銃を組み立てたりと、『ニキータ』を想起させるシーンもあり、ファンには堪らない。
しかし、アクションは数段とバージョンアップ。
批評家の皆さんには「既視感を覚える」として、あまり評判はよろしくなかった様ですが、わたし的には大満足。
特に、初任務で白くてフワフワの毛皮のコートに身を包んだアナが、敵に掴まれたコートをクルッと脱ぎ捨てると、中に着ていたピタピタの黒いレザー・ジャケットが露わになるシーン。
この黒と白のコントラスト、フワフワからピタピタへのギャップが、モデルからスパイに変身する様に見え、鳥肌モノのカッコ良さ。
確かに、食器でナイフに立ち向かうシーンも、後ろから近づく敵をノールックで撃つシーンも、どこかで見たことがあると言えばある様な気はする。
だが、アナを演じるスーパー・モデル、サッシャ・ルスの手足の長さでアクションが非常に映える。
全然強そうに見えない綺麗なお嬢さんが、屈強な男達をバッタバッタとなぎ倒す様は気持ちが良い。
そして、華奢な体にはデカい銃よりもハンドガンが似合う。
と言うわけで、今回は↑のイラストになった訳でございます。
『男たちの挽歌』のチョウ・ユンファばりの二丁拳銃も大好物です。
「筋骨隆々のお姉さん」がデカイ銃をブッ放す映画はジェームス・キャメロンにお任せして、リュック・ベッソンには「こっちの路線」を続けて頂きたい。
『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』の宇宙人のお姫様役に続き、リュック・ベッソン監督作の主演に大抜擢されたサッシャ・ルス。
ちょっと目が離れていて、ちょっと受け口、個人的には超美人とは言えないと思うのだが、どこか愛嬌のあるお顔。
果たして『レオン』のナタリー・ポートマン、『フィフス・エレメント』のミラ・ジョボビッチに続き、大スターへと成長出来るか?
そしてもうひとり、本作で注目して欲しいのは、アナのKGBの上官オルガを演じるヘレン・ミレン。
やり手で、謎めいていて、深みのある、ある意味一番おいしい役。
彼女がどうやってここまで上り詰めたのか、若き日のオルガの活躍を描く前日譚も観てみたい。
そういえば、ヘレン・ミレンは『RED/レッド』シリーズでも『元スーパー・スパイ』を演じてたっけ。
あの映画でも、ブルース・ウィリス、モーガン・フリーマン、ジョン・マルコヴィッチといった癖強おじさん達を差し置いて、一番印象に残ってるもんなぁ。