yakkunの趣夫生活

人生で大切なことは、全て映画が教えてくれた。

『北北西に進路を取れ』〜 ジェームズ・ボンドの原型!

(North by Northwest 1959年 アメリカ)
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アルフレッド・ヒッチコック最高傑作の呼び声も高い、巻き込まれ型サスペンス・アクション。

本作の前後に製作された『めまい』、『サイコ』、『鳥』は、本作とともにヒッチコック映画ベストワンに挙げられることも多く、正に彼の全盛期に撮られた1本と言えるだろう。


因みに私が敢えてベストワンを選ぶなら、軽いのノリの『ハリーの災難』かな。
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オープニングのタイトルバックからカッコいい。

グリーンをバックに、上下、斜めにラインが引かれ、その線に沿って白抜きのキャスト、タイトルロゴが現れては消えて行く。

やがてグリーンのバックはガラス張りのビルの外観へと変わり、今度はそのガラスの上に白抜きの文字でスタッフのクレジットが表示される。

カメラは人々が行き交う街を映し出し、最後にヒッチコック監督の名前が左に流れて行くと、それを追うように右から監督本人がフレームイン。

目の前でバスのドアが閉まり乗り遅れるというオチ。

サスペンスの中にもちょっとした笑いを入れてくるセンス、好きです。



続いて、満員のエレベーターから押し出されるように主人公のロジャー・ソーンヒル登場。

横にはメモを持った秘書を伴っており、一目で彼がやり手である事が伝わる。

ロジャーは秘書と別れ、ホテルのロビーで仕事のミーティングに参加するが、そこでジョージ・カプランという人物に間違われ二人組の男達に拉致されてしまう。



この「人まちがい」が本作のポイントとなるので、設定に無理があると物語に入り込めない。

しかし、二人組がロジャーをカプランだと思い込む過程が、絶妙且つ簡潔に描かれる。

ホテルのロビーで、ボーイが「ジョージ・カプラン」という人物を呼び出しており、それと同時にロジャーが電報を頼む為にボーイを呼ぼうと手を挙げてしまう。

カプランという名前に反応して手を挙げたとしか思えないその様子を、ロビーの入り口で見ていたのが例の二人組。

「奴がカプランだ」

それだけでは終わらない。

ボーイがロジャーに対し「電報は、あちらの受付でお願いします」と指差した先にはあの二人組。

まるで「あちらの方が呼んでます」と言わんばかり。

二人組、ではなく受付に向かって歩き出すロジャーだったが、銃を突きつけられ連れ去られてしまうのだった。



ロジャーが連れて来られたのは、大きな屋敷。

そこでタウンゼントと名乗る男と対面し、ロジャーはジョージ・カプランという名のスパイと間違われていることが分かってくる。

カプランなる人物がスパイなのであれば、誰も顔を知らず、ロジャーの「人違いだ」という主張を信じて貰えないのも合点がいく。

なかなか口を割らない(というか本当に知らない)ロジャーに業を煮やした”タウンゼント”は、ロジャーを酒に酔わせて事故に見せ掛けて殺そうとするが、辛くもロジャーは車を奪い逃走。

パトカーと事故って捕まってしまうのだが、そのお陰で追って来た殺し屋達からは逃れる事ができるのだった。



酩酊状態のロジャーの主張は警察に信じて貰える筈もなく、翌日カプランが滞在しているホテルに行くが彼の姿がないばかりか、ホテルの従業員の誰も彼の姿を見た者はいないのだった。

タウンゼントが国連で演説をすると聞いたことを思い出したロジャーは、彼に会うため国連本部へと向かうが、そこにいた本物のタウンゼントは前日会った男とは全くの別人であった。

更にロジャーは、彼を追ってきた殺し屋によって殺人犯に仕立て上げられてしまう。


果たしてロジャーは、彼をカプランだと思い込んでる殺し屋に加え、警察にも追われることに。

ロジャーは両者から逃げきり、真実に迫ることができるのか!?




最近の映画を観慣れている人たちにとっては、当時の合成技術は古臭く感じてしまい映像の面では興醒めかもしれないが、ストーリーはテンポ良く進みサスペンスの盛り上げ方も上手いので、最後まで飽きることはないと思う。


カプランを追いシカゴへ向かうロジャーの前にイヴ・ケンドールという名の美女が現れ、彼女はロジャーが警察に追われているのを知りつつ彼を助けてくれる。

「流石にその展開は都合良すぎないか」と思って見ていると、徐々に彼女の秘密が明らかになる。


この展開、何処かで見たような気が・・・?

そう、あの「007」シリーズで良くあるヤツなのである。


実際に、1962年の「007」第1作『ドクター・ノオ』を監督したテレンス・ヤングは、本作の影響でジェームズ・ボンドの”戦闘服”に高級スーツを採用したらしい。


やり手広告マンのロジャーは洒落たスーツでキメており、劇中でも「偽タウンゼント」にお洒落イジリをされている。

スーツのまま拉致され、その後はずっと”追いながら逃げる”展開が続くので、ずっと同じスーツのまま。

あの有名なトウモロコシ畑で複葉機に追われる時も、クライマックスのラシュモア山のシーンも(上着は脱いでいるが)ずっとスーツのまま。

まるでジェームズ・ボンドなのである。


そういえば、テレンス・ヤングは「007」第2作『ロシアより愛を込めて』でも、”複葉機に追われるロジャー”を連想させる、”ヘリコプターに追われるボンド”のシーンを撮っている。

そう考えると『ロシアより〜』のタチアナとボンドの列車でのシーンも、本作のイヴとロジャーを想起してしまう。



余談だが、『ミッション・インポッシブル/ローグ・ネイション』の冒頭でトム・クルーズがスーツ姿で離陸する飛行機の外側に張り付いてるシーン、絶対に「ジェームズ・ボンド」をやってるものだと思ってましたが、実は本作へのオマージュで絶対にスーツを着て撮りたかったのだとか。

間違えてました、ごめんなさい。



段々と謎が明かされて行き、様々な映画でパロディ、オマージュされているラシュモア山でのクライマックス。

本作最大とも言えるハラハラの場面から一転して・・・。

このラスト、わたしはオシャレだと思います。

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