『ロマンシング・ストーン 秘宝の谷』〜 ある脚本家、唯一の作品

(Romancing the Stone 1984年 アメリカ)
ロマンシング・ストーン 秘宝の谷(字幕版)






『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のロバート・ゼメキス監督が、その前年に監督したロマンティック・アドベンチャー・コメディ。


1984年ゴールデングローブ賞(ミュージカル・コメディ部門)で、作品賞・主演女優賞を受賞しており、1985年には続編『ナイルの宝石』も製作された。




アンジェリーナが小屋に1人でいるところに、西部の荒くれ者グローガンが押し入ってくる。

アンジェリーナは、彼にお宝を奪われたばかりか自信の身にも危険が及ぶと、隠し持っていたナイフを素早く投げつけ彼の胸に命中させる。

グローガンは、彼女が長年追っていた家族の仇だったのだ。

復讐を遂げた彼女は馬を駆り去ろうとするが、グローガンの兄弟逹に見付かってしまう。

アンジェリーナがピンチを迎えた時、丘の上に現れた謎の男。

ライフル一閃、悪党どもを倒すとアンジェリーナの元へ駆けつけ二人は熱い抱擁を交わす。

再会を果たした二人は、それから幸せに暮らしましたとさ。

めでたしめでたし。



と言った感じのオープニングの後に映し出されるのはタイプライターで打っている女性。


いまの物語は、本作の主人公であるジョーン・ワイルダーが書いているロマンス小説だったのだ。


しかも、自分が描いた小説で号泣している。


彼女は涙と鼻水を拭く為にティッシュを探して家中歩き回るのだが、この時に冒頭の物語の雰囲気のポスターや、何かの賞の賞状(?)が飾ってあったりして、彼女が小説で成功していることが分かる。


同時に、忘れっぽいのか執筆活動が忙しいからなのか、あちこちにメモが貼ってある。


その中に「ティッシュを買う」と書かれたものが。



秀逸なオープニング。


無駄な台詞なしで、彼女のキャラクターを描写していく。


ドアがちょっと開いたところで彼女が話しかけ、男性が現れるのかと思いきや、出てきたのは猫。


独り者なのねって事を暗示させる。


猫の名前が「ロミオ」ってところにも、夢見がちな女性だって感じが現れてると思います。。


そんなジョーンの姉がコロンビアでトラブルに巻き込まれた事により、ジョーンも姉を助けるためコロンビアへ。


そこで繰り広げられるお宝争奪戦。


ジョーンは偶然出会った冒険家のジャックに助けられながら、数々のピンチを切り抜けて行く。




本作は、ジョーンとジャックの一見チグハグな二人が、歪み合いながらも行動を共にするうちにお互い惹かれていくという、ロマンス中心のアドベンチャー映画です。


作られた時期も近いので、どうしても『インディ・ジョーンズ』シリーズと比較されがちだが、両者は方向性もテイストも全く異なります。


『インディ・ジョーンズ』は、宝探しの謎解きや色々なトラップでドキドキワクワクさせますが、本作はもっとほのぼのとした感じ。


だから悪役も悪役として早々と登場し、素性を隠して主人公に近づいてるときはハラハラするよりも「志村後ろ〜っ!」的な雰囲気で安心して観られる。


争奪戦を繰り広げるもう一組の相手は、子悪党然とした子悪党。ダニー・デヴィートが、おとぼけ演技で笑わせてくれます。


とは言え、ちゃんと冒険映画もしてるし、恋愛映画もしてるコメディ映画なのです。


ラスト、大どんでん返しのハッピー・エンドも幸せな気持ちになれます。




そんなロマンティックな冒険物語を書き上げたのは、ダイアン・トーマスという、主人公ジョーンと同じ女性である。


こんなに面白い脚本を書いておきながら、以後全く活動していないことが気になったので調べてみたら、なんと本作公開の翌年に事故で亡くなってました。


1985年12月に本作の続編『ナイルの宝石』が公開される6週前だったそうです。


しかしながら、ダイアンは『ナイルの宝石』の脚本にも参加しておりません。


実はその頃、彼女はスティーブン・スピルバーグの仕事で忙しかったようで、1989年に公開された『オールウェイズ』の脚本を書いていたとか、『インディ・ジョーンズ』シリーズ第三弾の草稿を仕上げていたという話もあります。


彼女が書いた『インディ・ジョーンズ』、面白かったんじゃないですかね。




本作を「『レイダース』(1981年)のパクリだ」と言って低評価をつけている人達もいるようですが、元々、本作の脚本は1978年に完成しており、マイケル・ダグラスとコロンビア映画が買っていたとのことです。


結局、6年後に20世紀FOXによって映画化されましたが・・・。