(Black Widow 2021年 アメリカ)
マーベル・シネマティック・ユニバース第24弾。
2010年の『アイアンマン2』での初登場以来、10年以上アベンジャーズのメンバーとして活躍してきた”ブラック・ウィドウ”初の単独映画。
と聞くと、「今まで観てないし」とか「今から23本も観られないし」と思ってしまいがちだが、本作は初心者の方でも安心して観られる一本となっております。
そもそもブラックウィドウことナターシャ・ロマノフは、いわゆる”スーパー・パワー”を持っているキャラクターではないので、本作も「ヒーロー映画」というよりも「スパイ映画」の雰囲気を強く感じました。
『ジェイソン・ボーン』シリーズのような格闘アクションに『ミッション・インポッシブル』シリーズのようなカー・アクション、そこに『007』シリーズ、特に60年代、70年代に見られたSF風味を加味したような、盛りだくさんの内容になっておりました。
実際、劇中にナターシャが『007 ムーンレイカー』(1979年)を観ているシーンもあるし、又、『ムーンレイカー』を意識していると思われる要素も本作に入っていたように思います。
ネタバレになるのでここには書きませんが、気になる方は「ブラック・ウィドウ ムーンレイカー」で検索すれば解説されてるサイトがあるので、是非そちらを。
今回、一応シリーズ全作品(Disney+配信のドラマ作品以外は)全て観ている私と、なぜか『マイティ・ソー』だけは観ている奥様と二人で観てきましたので、二人の感じ方の違いなども含め紹介していきたいと思います。
1995年のフロリダ、まだ幼いナターシャと妹と両親、一見幸せそうな家族4人が何やら逃げ出す準備を始める。
ホームドラマのような雰囲気から段々に不穏な空気になっていき、パトカーとの追いかけっこから徐々にアクションが盛り上がっていき、隠していたセスナで追っ手を振り切り家族全員でキューバへと逃亡する。
オープニング前にアバンタイトルでひと盛り上がり作る手法も、『007』などスパイ物でよく見るパターンである。
時は流れて2016年、ナターシャは追われる身となっており、身を隠していると思われる建物を包囲されていた。
シリーズのファンは、このシーンで「あの映画で政府から追われる身となった後の話なんだな」ということが分かるのだが、その経緯を知らない奥様にとっては「何で追われてるの?」と気になってしまうらしい。
「でも、今回の映画の話には関係ないし」と思えるのは、ナターシャが次の『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』まで身を隠しているのを知っているから言えることで、何も知らない人にとっては「?」となってしまうのは言われてみれば無理もない話。
簡単に説明すると、一般市民の犠牲者を出さない為にスーパーヒーローチーム「アベンジャーズ」を国連の管理下に置こうとする「ソコヴィア協定」というものがあって、反対する立場のナターシャはアメリカの国務長官に追われていたのだ。
ともあれ、建物のトイレに潜んでいると思われるナターシャと、彼女につけた発信機を頼りに狭まっていく包囲網。
いよいよドアの外まで来ている。
ドアが空いた次の瞬間・・・。
ナターシャは全然違う場所にいて、トイレには発信機だけが残されている。
ありがちなシーンだが、ジワジワくる緊迫感は大好きです。
家族で夜逃げ(?)するオープニング、コソコソ逃げ回る逃亡生活と、映画序盤は暗い雰囲気で進むが、妹のエレーナと再会したあたりから少しずつ笑いの要素が入って来て、パパも合流してからは随分と明るい映画になってました。
エレーナがナターシャの、いわゆる「ヒーロー着地」を弄るシーンは最高だった。
一度ならず、二度、三度。
本作は、バラバラになった「家族」が再生する物語なので、ひとりぼっちだったナターシャが家族と再開して行く度に、映画も明るくなって行くのかなと感じました。
「家族」を取り戻したナターシャが、バラバラになってしまったもうひとつの「家族」である「アベンジャーズ」を再生させることを誓うところで終わる。
その辺の裏ストーリーを感じ取る為に、やっぱり過去作を観ておきたいというあなた。
何も23作、全て観る必要はありません。
23作の内、カメオ出演以外でブラック・ウィドウが登場するのは7作。
以下、7作を簡単にご紹介。
『アイアンマン2』(2010年)
スーパーヒーローを管理する国際平和維持組織「S.H.I.E.L.D.」のエージェントとして初登場。
『アベンジャーズ』(2012年)
『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014年)
『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015年)
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016年)
ソコヴィア協定を巡りアベンジャーズが分裂。ソコヴィア協定に反対するメンバーの逃亡を助けた罪で、ナターシャも追われる身に。本作『ブラック・ウィドウ』は、この作品の直後の話という事になります。
以下2作は、最強の敵「サノス」とアベンジャーズの戦いを描いた連作。
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018年)
『エンドゲーム』を最後にナターシャはアベンジャーズを”去り”、『ブラック・ウィドウ』のポストクレジットシーンは『エンドゲーム』の後の話である。
あれを見る限り、今後のマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)にエレーナが関わってくることを予感させる。
本作は、今後のキーマン「エレーナ」の誕生物語でもあるのかもしれない。
また、本作を観てブラック・ウィドウの過去の活躍を見たくなったり、更にそこから他のアベンジャーズのメンバーの活躍が見たくなったりすることもあるでしょう。
そういう意味では、本作をきっかけにMCUにハマっていくパターンも有りなんじゃないでしょうか。