(어린 의뢰인 2019年 韓国)
2013年に韓国で実際に起きた継母児童虐待死亡事件を基に映画化しているとのことだが、最近は「実話ベース」と聞いてもあまり驚くことがなくなってきた。
現実世界に、信じられないような事件が多すぎる。
本作で扱われている事件についても、あってはならない事だが、ありがちな、どこかで聞いたことあるような内容である。
それは継母による虐待死という意味でね。
さすがに、10歳の少女が「弟を殺しました」って話は聞いたことないけど。
『幼い依頼人』というタイトルからは、まず事件が起こり、如何にして少女の無実と継母の有罪を証明して行くという話を想像したが、本作は物語の中心をそこには置かず、むしろ、なぜ事件が起きてしまったのか、事件に至るまで何が起こっていたのか、というところを描く事に重点を置いているように感じた。
10歳の姉ダビンと7歳の弟ミンジュンの元に、父親が新しい母親を連れて来る。
はじめのうちは子供達に優しい言葉をかける継母だが、食事中にミンジュンが箸を上手く使えず何度も食べ物をこぼす事に態度を急変させる。
この時点では直接的な虐待の描写はないのだが、継母の表情が変わり、手首につけていた髪留め用のゴムを「パチン」と外すと、子供達に背を向けると徐に髪をまとめる。
ここで場面が転換してしまうのだが、このシーンだけで何かを予感させるには充分である。
続いて映し出されるのは、幸せそうな親子の食卓。
この家庭にも同じ歳ぐらいの男の子がいるが、こちらはまだ箸が使えないからとフォークを渡されている。
二つの家庭の食卓が対照的に描かれ、更に照明にも差をつけることで、その違いを浮き彫りにする。
同じなのは、食事をする男の子達の無邪気さだけ。
実はこの家は主人公である青年の姉の家で、ロースクールを卒業しながらも就職に失敗して姉の家に居候しているのである。
うだつの上がらない主人公が活躍するってパターンも、なんだかんだ言って熱いよね。
重い内容の話ではあるが、暗くなりすぎないように絶妙なバランスで「軽いノリ」を織り交ぜている。
序盤の主人公のダメっぷりもそうなのだが、そんな彼を慕って毎日のように児童福祉館に遊びに来る幼い姉弟。
ハンバーガーや動物園にはしゃぐ姿は普通の子供。
そんな姿にはほのぼのさせられるのだが、弟のミンジュンが「ハンバーガーにカブリついたら食べ物がこぼれちゃう」と激しく動揺するシーンには、やはり食卓のシーンの後に何かあったのだなと想像させ胸を締め付けられる。
直接的な継母の暴力シーンを避ける事で、本当は虐待の事実はなく事件の真犯人は姉のダビンだと思う人はいないだろうし、作り手もミスリードを狙っているわけではないだろうが、非常にうまい演出だと思った。
主人公のダメっぷり、姉弟とのほのぼのシーンとのバランスを考えても、重すぎるシーンはない方が良い。
しかし、後半になると話はどんどんヘヴィになって行く。
弁護士の仕事が見つからない主人公は、姉の勧めで仕方なく児童福祉館で働きはじめるだが、彼らに子供たちを虐待から救う”力”はない。
ダビンが継母の暴力を警察に訴えると事件は児童福祉館に回ってくる。
でも、彼らに出来る事は家庭訪問ぐらいで、法的に何かをすることは出来ない。
子供が通報しても事件として処理されず、法律が守ってくれないのであれば、周りの大人が気づいてあげるしかないのだが、彼らは事態が大きくなるまで見て見ぬふり。
近所の住人、担任の先生、主人公・・・。
本作は、ラストに事件が解決して「あぁ、良かったね」という類の映画ではない。
観た人が、色々と感じ、色々と考える為の映画。
根本的な解決策のない問題かもしれないが、考えて行かなければいけないと思う。
そんな沈んだ私の心を救ってくれたのは、ダビンの同級生のジャンホ。
彼は、色んな意味で本作のMVP。
グッジョブ!