yakkunの趣夫生活

人生で大切なことは、全て映画が教えてくれた。

『スターシップ・トゥルーパーズ』〜 カルメンじゃなくてディジー派

(Starship Troopers 1997年 アメリカ)
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本作の主人公ジョニー・リコは、運動は得意だが勉強は苦手な高校生。


同級生のディジーはジョニーに憧れているが、彼にはカルメンという恋人がおり美人で成績も優秀、ジョニーはディジーに見向きもしない。


だがカルメンはちょっと小悪魔キャラ、ジョニーのアメフトの試合中に敵チームのエースに色目を使ったりする。


ジョニーはそんなカルメンが気になって試合に集中できず、チームメイトであるディジーの作戦指示も耳に入って来ないが、最後はディジーの作戦に従い逆転勝利!


若い時はカルメンみたいな女子に惹かれがちだが、絶対に一途に思ってくれるディジーの方が良いのに。ジョニーは分かってない。


青春真っ只中の彼らも高校生活ももう時期終了。


カルメンの卒業後の夢は、艦隊アカデミーに入り戦艦のパイロットになること、ジョニーは彼女を追いかけて、親の反対を押し切り軍隊に入隊する決意をする。


「あなたは、軍服の似合うあの女に騙されてるのよ」とジョニーの母。


わたしもそう思う。


しかし、騙しているのは彼女だけではない。


政府自体が、壮大なプロパガンダで国民の戦意を高揚させ、戦争へと駆り立てているのである。


しかも、兵役を経た者しか「市民権」を与えられないという、なんとも酷い政府なのだ。






そうそう、申し遅れましたが、本作は青春ラブ・ストーリーではありません。


本当はSF戦争アクション映画です。


未来の地球は民主主義が崩壊し、地球連邦が世界を治めております。


ついに人類は他の惑星に植民を開始しますが、ある惑星で昆虫型の宇宙生物と遭遇し全面戦争へと発展してしまいます。


映画冒頭から、兵を募集するCMや戦況を報告するニュースが流れて、プロパガンダよろしく観客に本作の世界観を刷り込みます。


以降、何度も同じようにニュース映像や、戦意高揚CMが挿入されます。


中でも一番”酷い”のは、「みんなも宇宙軍に協力しよう」と子供達に訴えるCMで、そこに出演している子供たちが地球の虫を踏み潰している映像である。


戦っている相手が虫に似た宇宙生物なのであって、地球上の虫は関係ないよね。


こういうことって現実世界でもあるよね。


全然関係ない人が、ネットで叩かれたりヘイト・クライムにあったり・・・。


本作は、そういった情報操作・印象操作の恐ろしさを痛烈に批判している。


さて、自分たちの正義を信じて宇宙戦争へと身を投じた若者たちの運命は・・・?






厳しい訓練を経て、遂に戦地に赴くジョニー達であったが、そこで待っていたのは圧倒的な絶望感だった。


虫(宇宙生物)たちが、デカイし強いし、その上物凄い大群で押し寄せてくる。


地球の最新兵器でも太刀打ちできない。


まさに無力。


無駄、無駄、無駄、無駄、無駄、無駄、無駄、無駄、無駄、無駄なのである。






そんな虫に命を吹き込んだのは、『ロボコップ』(1987)でもポール・ヴァーホーヴェン監督と組んだフィル・ティペット。


『ロボコップ』では、見事なストップモーション・アニメを披露してくれましたが、『ジュラシック・パーク』(1991)でCGアニメーターに転向。


見事に「もう一花」咲かせることに成功しております。






実は本作には、ロバート・A・ハインラインの『宇宙の戦士』という原作が存在し、そこには、ガンダムの元になったとも言われるパワード・スーツという兵器が登場するのだが、本作に登場させず生身の人間で勝負した事は正解だったと思う。


強い兵器が存在せず、到底虫には敵わない感じになった方が、絶望感はさらに大きい。


フィル・ティペットのストップモーション・アニメで動くパワード・スーツも見てみたかった気もしますが、ここは妄想するだけで我慢しておきましょう。


同じ様な理由で、主人公を演じたのが、キャスパー・ヴァン・ディーンという良く知らない普通の兄ちゃん風なのもイイ。


主人公が、シュワちゃんとか、ドウェイン・ジョンソンみたいに人間離れした体格の持ち主だったら、一人でなんとかしちゃいそうだもんね。






圧倒的な力の差を見せつけられた人類の運命と共に、三角関係の行方も気になるところだとは思いますが、そこはご自身の目でお確かめ下さい。


ちなみに、ディジーを演じたディナ・メイヤーさんは、本作の後に『ソウ』シリーズで女刑事を演じたりしておりますが、イマイチぱっとしません。


残念。