yakkunの趣夫生活

人生で大切なことは、全て映画が教えてくれた。

『ナイル殺人事件』〜 ただの推理ミステリーじゃないよ。

(Death on the Nile 2022年 アメリカ)

Gal Gadot

わたしは、シャーロック・ホームズは好きだが、エルキュール・ポアロはあんまり好きじゃない。


なんか「いけ好かない奴」というイメージ。


だから、前作の『オリエント急行殺人事件』(2017)は、映画館に観に行かなかった。


シドニー・ルメット監督版『オリエント急行殺人事件』(1974)を観て、犯人も知っていたし。


じゃあ、何で本作は映画館まで足を運んだかと言うと、『オリエント〜』がTVで放送された際に観たら意外に楽しめたのと(オチを知ってるのに)、何と言っても、ガル・ガドットが出演しているという事が大きい。


しかも、ジョン・ギラーミン監督版『ナイル殺人事件』(1978)は、観たはずなのに良く覚えていないので、ストーリーも楽しめるかも?と思ったのも理由の一つ。


しかし、『オリエント急行〜』は覚えているのに、何で『ナイル〜』は覚えてないんだろう?


観た時期も、そんなに変わらなかったと思うんだけど。


まあ、確かに『オリエント〜』のオチは反則級のインパクトだから、より印象が強いのかとは思いますが・・・。


そんなわけで、ほとんど記憶マッサラな状態で挑んだ本作は、とても「映画らしい映画」で、大変楽しめる一作となっておりました。





ある富豪の夫婦が新婚旅行で訪れたナイル川の豪華客船クルーズで殺人事件が起こり、偶然乗り合わせた私立探偵エルキュール・ポアロが事件を解決。


その程度の知識だけで本作の鑑賞に臨もうと思っていたのだが、鑑賞前に見たTV番組の映画コーナーで誰が殺されるのか知ってしまい衝撃を受けることに!


っていうか、わたしは本当に1978年版を観ているのだろうか?


全然覚えてないんですけど。


自信が無くなってきた。






でも、そんなことでは揺るがないぐらい本作は面白かったですよ。


多分、犯人を覚えていても楽しめたと思う。


サスペンスドラマみたいに、早い段階で事件が起こって、そこから犯人探しが展開するのかと思っていたが、事件が起こるまでの経緯がじっくり描かれていて、被害者が殺されてしまう理由、犯人が殺人に至る理由、多くの登場人物が疑わしい理由が丁寧に描かれている。


原作小説は1937年に発表されたもので、殺人のトリックに関しても特筆すべきところがあるわけではないので、ドラマに重点を置いた事は正解だと思う。


やはり「衝撃の事実」の衝撃度合いでは『オリエント急行〜』には敵わない。


解決編が盛り上がらなくても、そこに至るまでの展開で充分に映画を堪能出来る。


オチが分かっていても本作を楽しめると、わたしが言う理由はそこにある。


オープニングでは、第一次世界大戦で従軍していたポワロの様子が描かれる。


そこで、ポアロが立派な口髭を蓄えている理由や、彼には嘗て愛していた女性が存在していた事などが描かれる。


このエピソードが、物語、そしてポアロというキャラクターに深みを持たせている。


あんまり好きじゃなかったポアロが、ちょっと魅力的に見えてくる。


こんなポアロだったら、また観てみたい。


次は、『地中海殺人事件』か?『死海殺人事件』か?






監督・主演のケネス・ブラナーは、俳優としても色々な作品に出ているが、監督としても『マイティ・ソー』、『エージェント:ライアン』、『シンデレラ』といった娯楽作品から、『から騒ぎ』、『ハムレット』などのシェイクスピアものに代表される文芸作品まで手掛ける、振り幅の広い監督だという印象。


前作『オリエント急行殺人事件』でもそうだったが、横長の画面を一杯に使った画作りにも、彼の類まれなる才能を感じる。


元から映画館で上映する事を前提に製作されているのだから、映画に対して「映画館で観るべき映画」と評することは好きではないのだが、色々な映画の鑑賞方法が存在する昨今、本作は「映画館で観た方が、より楽しめる映画」であることは間違い無いだろう。


まぁ、CG合成も使われているのだろうけど、物語の舞台である豪華客船やエジプトの遺跡、華やかなパーティー・シーンなどは、大スクリーンで観た方が、より一層「映画感」が増すと言うものである。