(Pandorum 2009年 ドイツ・アメリカ PG-12)
時々、ヒットする映画としない映画の差って何だろうと考えることがある。
当たり前の話、面白いかどうかってことが重要だって事は分かるんだけど、観ていて面白いのに「何故この作品は有名じゃないのかな?」って思ってしまう事があるのです。
この『パンドラム』も、そんな作品の一本。
映画冒頭から、謎、ナゾ、なぞ!
危機また危機の連続!
敵か味方か分からない人間たちが一人また一人と登場し、全く先の読めない展開で物語にグイグイ引き込まれ、最後まで飽きずに観られました。
時は西暦2174年、増え過ぎた人口による食糧問題を解決する為、人類は、地球から遠く離れた地球型惑星タニスに向け、移民船エリジウムを打ち上げた。
やがて一人の男がコールドスリープから目覚めるが、冷凍睡眠の後遺症で記憶障害を起こしている。
自分の名前も覚えておらず、自分の入っていたカプセルに書かれていた名前を見て、自分が「バウアー伍長」だと気付くところとかイイよね。
暫くすると、隣のカプセルからペイトン中尉も目覚めるのだが、彼も記憶障害を起こしている。
宇宙船の機能が正常に作動しておらず他のクルーとも連絡が取れない事から、バウアーは、通信によるペイトン中尉のサポートを受けながら、一人で船内の探索に向かう。
突然、バウアーは謎の女性に襲撃され喉元にナイフを突き付けられる。
ここのシーンも何気に好き。
わたしは強い女性が出てくる映画に目がないので、彼女がいとも簡単にバウアーを倒してあっという間に馬乗りになるとこに大興奮。
ここからの彼女の活躍に期待してしまう訳ですが、彼女はバウアーに「奴らに見つかるから靴を脱げ」という言葉を残すと、暗闇の中の何者かの気配に気付き姿を消してしまう。
今度はいつ出てくるの?
わたしの興味を引くのが上手いぞ、この映画。
暗闇の中の気配の正体は、人型ではあるが明らかに人間ではない何者かで、人肉を喰らうモンスターだった。
モンスターに襲われそうになったバウアーは、ロッカーみたいな所に入って身を隠すのだが、音も立てないように息を潜めているところでペイトン中尉からの通信が入ってしまう。
慌ててスピーカーを手で塞ぐバウアー。
こういう、見つかるのか?見つからないのか?みたいなジリジリする演出、ありがちではあるけれどもヤッパ好き。
何とかモンスターをやり過ごし、再び探索に向かうバウアー。
途中で、モンスターが仕掛けたと思われる罠に掛かっていた男を救出するのだが、この男を演じているのが『ウォーキング・デッド』のダリル役で有名なノーマン・リーダス。
ダリルのような大活躍でサバイブしていくのかと思いきや、助かったと思ったのも束の間、あっという間にモンスターの餌食となってしまう。
大ブレイク直前のチョイ役でした、合掌・・・。
ダリル(本当の役名はシェパード)に続いてバウアーもモンスターたちのターゲットにされるが、間一髪のところで移民船の農業担当だった男に救われる。
一度はバウアーと別行動をとるその男は、バウアーが再び”謎の女性”の襲撃にあった時、またしてもバウアーを救いに現れる。
彼女が強いのかバウアーが弱いのか、今回もバウアーは簡単に彼女にマウントを取られてしまう。
彼女の出番をもっと多くして、有名な女優さんがやっていたらヒットしていたんじゃ?などと思ってしまう。
逆に、もし本作が大ヒットしていたら、彼女が大スターになっていた・・・なんてこともあったかも?
演じているドイツの女優さんアンチュ・トラウェさんは、本作の後、ザック・スナイダー監督の『マン・オブ・スティール』(2013)でスーパーマンの敵ファオラ=ウル役にも抜擢されているだけに、本作の大ヒットから大スターへの目もあったんじゃないかと考えてしまいます。
対する農業担当の男を演じているのは、日本でも有名なヴァンダレイ・シウバ、フランク・シャムロックなんかとの対戦経験のある本物の格闘家カン・リー。
彼のドウェイン・”ザ・ロック様”・ジョンソンも、『ハムナプトラ2』の脇役から大スターへの一歩を踏み出している。
本当に闘う技術を持った人が演じているアクションシーンには説得力が生まれるし、たとえセリフが少なくても、その演者さんはインパクトを残す。
考えれば考える程”ヒット”の要素が詰まっている気がするのだが、きっと大勢に響く”何か”が足りなかったんでしょうね、わたしにはビンビン響いてしまいましたが。
コールドスリープから目覚めて以来ひとりで生き延び誰も信じられなくなっている二人に対し、バウアーは今はお互いに協力するべきだと説き三人は行動を共にすることに。
”謎の女性”に連れられ行った先は生態系開発室。
彼女は、船内で地球の生態系を保存、管理している科学者だったのだ。
科学者?そのわりに強くない?
その戦闘技術は、コールドスリープから目覚めてから身につけたものですか?
なんて野暮な事は言いっこなし!
わたしはそのくらいのことには目を瞑れる男です。
そして、宇宙船の機能を正常に戻すために原子炉を再起動しようと船内を奥へと進む三人の前に、元調理担当だったという男が現れるのだが・・・。
果たして彼らの運命は?
船内のモンスターたちは、一体何者なのか?
そして、タイトルの「パンドラム」が意味するものとは?
最後には、意外な結末が用意されてました。
この記事を書くために観直し始めて、普通に最後まで観てしまいました。
そのぐらい面白いし、好きなシーン、好きな要素が散りばめられている。
確かに、ペイトン中尉役のデニス・クエイド以外、そんなに有名な俳優さんは出てないし、クリスチャン・アルバートというドイツの監督さんも良くわかりません。
その為、公開規模も小さかったのかも?
もしプロデューサーのポール・W・S・アンダーソンが自分で監督してたら、公開規模も大きくなって、本作ももっと有名になっていたかもしれない。
そして、もうちょっと豪華な出演陣だったなら・・・。
『バイオハザード』シリーズ、『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』、『モンスターハンター』と、奥様のミラ・ジョボビッチを出演させ、何度も「ウチの嫁イイでしょ映画」を撮ってきたポール・W・S・アンダーソン監督。
本作も、ポール・W・S・アンダーソン監督、ミラ・ジョボビッチ出演だったら、それだけでだいぶ”派手”になっていたのではなかろうか。
とはいえ、ジョージ・ミラー監督の『マッドマックス』然り、ジェームズ・キャメロン監督の『ターミネーター』然り、無名監督と無名俳優の映画が思わぬヒットを飛ばす事が映画の世界では稀に起こる。
本作が、そんな作品達と肩を並べた可能性だってあったはずだ。
『マッドマックス』、『ターミネーター』がウケたのは、その独創性によるものが大きい。
そういう意味では、本作がオリジナリティに欠けている事は否定できず、ポール・W・S・アンダーソン自身の監督作である『イベント・ホライゾン』や『バイオハザード』と似た雰囲気が漂っている。
だが、他の記事でも書いていると思うが、いまの時代に真に独創的な作品を生み出す事はどんどん難しくなっていると思う。
要は、そんな中でどれだけ光るものを見せられるかだと思うのだが、それが本当に難しいんだろうなぁ。
そんな苦労の末に生み出された作品を観て、勝手にああだこうだ言ってるだけの我々は気楽なものである。
だからというわけでもないのだが、映画を観るときには悪いところよりも良いところを探しながら観るように努めたいと思っています。
そして本作は、わたしにとって好きなところが幾つもある作品で、この記事を読んで興味を持った方には是非一度観てもらいたい、というお話でした。
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