(Mission: Impossible 2 2000年 アメリカ)
シリーズ第1作は「こんなの『スパイ大作戦』じゃない!」とか偉そうなことを言ってあんまり好きになれなかった私ですが、本作『2』は大好きです。
まあ、今では前作も大好きなんですけどね。
その辺りの心境の変化は、以下の記事で詳しく書いております。
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しかし、第1作に輪をかけて「スパイチーム」感が薄くなり、トム・クルーズ=イーサン・ハントの独壇場となってしまった第2作はなぜ大好きなのかって言うと、それは監督がジョン・ウーだったからに他ならない。
香港時代の『男たちの挽歌』(1986)で私のハートを鷲掴みにしたジョン・ウーは、『ハード・ターゲット』(1993)でハリウッド・デビュー。
『ブロークン・アロー』(1996)、『フェイス/オフ』(1997)でヒットを飛ばし、遂に”プロデューサー”トム・クルーズに監督として抜擢されるわけですが、続く『ウインドトーカーズ』(2001)、『ペイチェック 消された記憶 』(2003)はパッとせず、中国に戻ってからは『レッドクリフ』2部作なんかもありますが、最近はお名前を聞く事もなくなってきて残念な感じ。
でも『マンハント』(2017)を観る限りは、アクション演出の腕は健在でしたけどね。あと鳩へのこだわりも。
そんなジョン・ウーの全盛期の作品とも言える本作では、彼特有のアクションの美学を堪能することができます。
シドニーの製薬会社バイオサイトで開発された殺人ウイルス「キメラ」と治療薬「ベレロフォン」をアトランタまで運ぶために、開発者であるネコルヴィッチ博士はイーサン・ハント(博士にはディミトリと呼ばれている。多分、任務上の偽名)に護衛を依頼。
ところが、護衛のはずのイーサン・ハントは博士からキメラとベレロフォンを奪うと、飛行機を事故に見せかけて墜落させてしまう。
実は、イーサン・ハントだと思われたこの男は全く別人の変装だったのだ。
その頃本物のイーサンはというと、岩壁でフリークライミングを楽しむというストイック過ぎるバカンスを満喫中。
このシーン、撮影では命綱を付けてるんだろうけど、画面上では生身で岩から岩へ飛び移ったり片手でぶら下がったりと、心臓に悪いシーンが続く。
トム・クルーズがスタントマンなしで無茶をするようになったのはこの辺りから?
行き先を告げづにバカンスを楽しんでいたイーサンの元に、ヘリコプターで指令が届けられる。
指令は勿論奪われたキメラとベレロフォンを取り戻すこと。
イーサンに届けられたサングラス型の「指令書」がいつものように「5秒後に消滅」すると、導火線の映像とテーマ曲。
今回は、ギター・リフがバリバリのアレンジでカッコ良い。
オープニングが終わると、イーサンは支持された通りに女泥棒のナイアをスカウト向かう。
ナイアの「仕事」の邪魔をして一度は怒らせてしまうイーサンだったが、翌朝壮絶なカー・チェイスを繰り広げた二人はイイ仲になってしまう。
命懸けの吊り橋効果か?
ナイアとの接触に成功したイーサンはスパイ組織IMFの上司に会いに行くのだが、その上司を演じているのがなんとアンソニー・ホプキンス。
何故かノンクレジットで出演されています。
どういった経緯で友情出演のような形で出演されたのかは不明ですが、まさか映画の中の世界みたいに誰かの変装ってことはないですよね?
それはさておき、ここで「キメラ」を奪って行ったのが休暇中のイーサンの代役として組織が送ったショーン・アンブローズだったこと、彼が過去にも何度かイーサンの代役として仕事をしていること、そしてナイアがショーンの元カノでショーンと接触するために利用しようとしていることが明かされる。
今彼のイーサンとしては、元彼の元へナイアを送り込む事に乗り気ではないが、他に良い方法がないので渋々引き受ける事に。
でも居場所の分からないショーンの元へどうやって送り込むかっていうと、向こうに見つけてもらおうということで・・・。
えっ!?
どういう事かと思ったら、「飛行機事故」以降ショーンはニュースをチェックしているはずだから、ナイアが逮捕されたニュースを見つけたら保釈させてくるに違いないということらしい。
「そんな上手くいくかいっ!」って思ったら、ソッコー保釈させてくれた。
ショーン、未練タラタラやないかっ!
ショーンの右腕であるヒューは「タイミングが良すぎる」とナイアを怪しむが、怒ったショーンは聞く耳を持たないどころか葉巻の吸口を切り取る器具でヒューの小指の先を切り取ってしまう。
この葉巻カッターの拷問ってギャング映画とかでもよく見るけど、スパッと切れずにゴリってなりそうで見ていて本当に痛々しい。
ヒューの指のケガは、この後ちょっとした伏線になっていてちょっと面白い。
なんやかんやでパイロットのビリーと、レギュラー脇役の天才ハッカー・ルーサーがチームに合流し、なんやかんやでナイア経由で情報を入手し、なんやかんやでバイオサイトのCEOとショーンの悪巧みを知ったイーサンは、「キメラ」をなき物にしようとバイオサイト本社に潜入する。
しかしこの作戦はショーンにバレバレで、もうちょっとで全ての「キメラ」を破壊できるってところでナイアを連れたショーンが現れる。
激しい銃撃戦の末、ナイアは窮地に陥ったイーサンを助けるため最後の「キメラ」を自らの腕に注射する。
「キメラ」に感染したら20時間以内に「ベレロフォン」を投与しなければ死に至る。
果たしてイーサンは、ショーンからベレロフォンを奪い返しナイアを救うことは出来るのか?
チームのメンバーの役割が前作よりさらに「サポート」的な感じが増したことも、ツッコミどころが多いことも否めない。
でもアクション映画として理屈抜きに楽しめる一本であることは間違いない。
そして、ジョン・ウー節とも言える独特のアクション演出も見どころの一つだ。
リアリティよりもカッコ良さ重視と割り切ったようなそのスタイルは、まさに華麗!
本作でもトム・クルーズが華麗に舞う。そして廻る。
縦に、横に、後に、前に、車でもバイクでも、とにかく本作のトムはクルクルクルクルよく廻る。
まっすぐ走りながらのバック宙キックなんてことが物理法則的に可能なのかどうか分からないが、もうカッコ良過ぎです。
メイキングを観る限りスタントの大部分をトム本人がこなしているようで、クライマックスの格闘シーンでも次々にスタント・コーディネーターから出される難題をクリアしていったという。
トムが相手の顎めがけて放った最後の一撃は、トムの蹴りが本当に当たってしまい本気で慌てているトムの表情が映画本編でも確認できるので機会があったら確認して頂きたい。