2001年9月11日、アメリカ同時多発テロ事件の際にハイジャックされた4機の旅客機のうち、唯一目標に到達しなかったユナイテッド航空93便。
膨大な量のインタビューを元に、その時の機内の乗員・乗客、地上の航空関係者の様子をドキュメンタリー・タッチで描く。
あらすじ
2001年9月11日、ニューアーク国際空港発サンフランシスコ行き「ユナイテッド航空93便」は予定時刻を30分ほど遅れて離陸の順番を待っていた頃、ボストン管制センターがアメリカン航空11便のハイジャックに気付く。
レーダーから消えたアメリカン航空11便の行方を捜していると、ワールドトレードセンタービルから黒い煙が上がる。
その後、ユナイテッド航空175便がワールドトレードセンタービルに、アメリカン航空77便がペンタゴンに次々に激突、ユナイテッド航空93便に乗っていたテロリスト4人も動き出す。乗員・乗客40名の運命は!?
感想
いまだかつて体験したことのない、鑑賞後の不思議な感覚。
まさに、「言葉がない」状態です。
わたしのこの涙は、感動か、悲しみか、悔しさか、それとも恐怖によるものか?
ドキュメンタリー出身のポール・グリーングラス監督らしい演出と、顔の知られていない(少なくとも、わたしは知らない)役者さん達を使うことによって、最初から最後まで緊張感溢れるリアルな雰囲気を持続している。
本作は、アカデミー賞監督賞にノミネートされ、英国アカデミー賞で監督賞を受賞している。
確かに、映画として良く出来ているし、その演出も賞賛に価するものである事に異論はありませんが、この作品で語るべきは、その内容にあると思います。
やはり一番最初に考えてしまうのは、「自分が同じ状況に置かれたとき、どのような行動がとれるか?」という事である。
自分の身を守るため、行動に出る事はできるのか?他人を守るために自分を犠牲にできるのか?
いくら考えても答えは出ない。
ユナイテッド航空93便の乗客達も、実際は、操縦席を奪い返し自分たちが助かる事が目的だったかもしれない。
それを一番に考えるのは自然な事である。
それでも、彼らがアメリカを、そして世界を救った事実は変わらない。
もしユナイテッド93便がホワイトハウスに落ちていたら、世界は相当混乱していた事でしょう。
ハイジャック犯である4人の若者たち。
彼らにも信じる神があり、自分たちの行いを正義だと信じていたと思うと、なんとも言えない気持ちにさせられます。
こんな人にオススメ
今生きている人々、これから生まれてくる人たち全員。
あのとき何が起こっていたのか?「本当の真実」は当事者達にしか知り得ない事なのかもしれないが、入念なリサーチの基に造られたこの作品をもって、彼らが最後まで戦った事を我々は語り継ぐべきだと思います。
本作を、エンターテインメント作品として楽しんでしまって良いのかどうかという事に迷いはありますが、強いて言えば、同じくポール・グリーングラス監督の『キャプテン・フィリップス』や、クリント・イーストウッド監督の『ハドソン川の奇跡』、『15時17分パリ行き』が好きな方にはオススメできると思います。
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