(Catwoman 2004年 アメリカ)
2001年『チョコレート』でアカデミー主演女優賞を受賞、2000年からは『X-メン』シリーズでストームを演じ、2002年の『007/ダイ・アナザー・デイ』ではボンド・ガールを務めるなど、人気、実力共に絶頂を迎えていたハル・ベリーを主演に迎え製作された、DCコミック『バットマン』の人気キャラクター『キャットウーマン』の単独映画。
しかしながら、ラジー賞において作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞を受賞してしまうという不名誉を受けることに。
最低映画賞と呼ばれるラジー賞では授賞式が開催されても受賞者が出席することは稀なのだが、この授賞式にハル・ベリーはオスカー像を持参して登壇。アカデミー賞受賞時の自らのスピーチをパロってみせ大喝采を浴びたという。
でも、ラジー賞に選ばれたからといって私の評価が変わるわけではないし、そもそもラジー賞自体が「愛の裏返し」というか「ネタ的」な賞ぐらいにしか思ってないので、皆さんにも「失敗作」であるかのような先入観は捨てて鑑賞していただきたいのです。
1992年の『バットマン リターンズ』でミシェル・ファイファー、2012年の『ダークナイト ライジング』ではアン・ハサウェイ、2022年の『ザ・バットマン』ではゾーイ・クラヴィッツ、そして本作のハル・ベリーと、これまで様々な女優さんが様々なキャットウーマンを演じてきました。
それ以前のキャットウーマンについてはちょっと存じ上げませんが、この4人のキャットウーマンに関して言えば、私は4人とも好きです。
みんな違って、みんな良い!のです。
『ダークナイト ライジング』、『ザ・バットマン』のリアル路線も、『バットマン リターンズ』や本作のファンタジー路線もどっちも好き!
「ネコ」と「強い女性」と「DC映画」が好きな私が、キャットウーマンを好きにならない理由なんて見当たらない。
ちなみに言うと、他の3作品ではキャットウーマンの正体はセリーナ・カイルという女性だが、本作ではペイシェンス・フィリップスとなっている。
『バットマン』とは違う世界観であるということを表しているのだろうか?ちょっと謎です。
化粧品会社「ヘデア・ビューティー」で広告デザイナーとして働くペイシェンス・フィリップス。
彼女は、へデア社が近く発表予定の画期的な若返りクリーム”ビューリーン”に関するある秘密を偶然知ってしまったことにより、会社の人間によって殺されてしまう。
しかし、不思議な猫の力によって再び命を与えられ、猫の能力を持った「キャットウーマン」として生まれ変わる。
シャイで地味なペイシェンスが、キャットウーマンとして蘇ってからのキャラ変ぶりが分かり易すぎるぐらい分かりやすくて、会社の友人たちからプレゼントされたというレザーの服を「絶対に着ない」と言った時点で誰もが「絶対に後で着るな」と思ってしまうのだが、やっぱりその通りの展開に。
だが、このレザーに身を包んだペイシェンスがバイクで夜の街を疾走するシーンが最高にカッコイイ。
そして、閉店後の宝石店に侵入した泥棒たちを偶然見つけた彼女が成敗してしまうのだが、この時の目の周りだけを隠すマスクに上下レザーというスタイルが私のお気に入りで、物語後半に「キャットウーマン」になってからの露出高めの衣装は、なんかデザイン的にイマイチなんだよなぁ・・・。
露出部分が多い衣装よりも、全身レザースーツの方がCG処理も楽だったんじゃなかろうかなどと思ってしまいます。
キャットウーマンの武器である「鞭」を使いはじめるきっかけも、キャラ変前にはハッキリと文句の言えなかった近所の「安眠妨害騒音パーティ野郎」の部屋にキャラ変後のペイシェンスが乗りこんだ際にドリンクサーバーのホースを振り回して、「あんなにシャイだったペイシェンスがこんなに変わりましたよ」っていう事と「これをきっかけに鞭を武器にしますよ」っていうのを同時に伝えるシーンになってて、ここも凄い好きです。
映像に関しては、最近のCGと比べてしまうと見劣りのするアニメっぽい感じになってしまっているが、『エイリアン4』や『ジャンヌ・ダルク』、『ロスト・チルドレン』などの特撮監督だったピトフ監督らしい独特な映像センスで、猫の能力を身に付けたペイシェンスの感覚が覚醒した感じを上手く映像で表現していたと思う。
実際に猫ってこんな感じなのかな?って思っちゃう。
自分が誰になぜ殺されたのか?
真実を探るためにへデア社の工場に潜入するキャットウーマンだったが、そこで”ビューリーン”の開発に携わった科学者が殺されているのを発見する。
しかも、その死体のそばに立っているところを第三者に見られてしまった為、キャットウーマンに殺人の疑いがかけられてしまう。
さらに別の殺人の濡れ衣も着せられてしまい、キャットウーマンことペイシェンスは恋人であるトム・ローン刑事に逮捕されてしまう。
「あらゆる証拠が君が犯人であることを示している」と追及するトム・ローンに「信じて欲しい」と懇願するペイシェント。
どうしても信じられないトムに対しペイシェントは「出会った時の事を覚えてる?」と問いかける。
「あなたは何を見た?」
「猫を助けようとしていた女性だ」
いや、嘘だ。
映画序盤、二人の出会いのシーンはこうだ。
場所はペイシェンスのアパート。
階は多分3階ぐらい?
いつの間にか窓辺に現れた野良猫が窓枠の上に登ってしまう。
猫を助けようと窓枠に乗り身を乗り出すペイシェンス。
そこにたまたま通りかかったトム・ローンは、彼女が飛び降りようとしていると勘違いしてしまう。
猫も姿を消してしまった。
ペイシェンスは窓から落ちそうになるが、間一髪トムに救助される。
身の危険を顧みず野良猫を助けようとする優しい女性に惹かれる刑事と自分を救ってくれた刑事に惹かれる女性の出会い、そしてペイシェンスと後に彼女に新たな命を与えてくれる猫との出会いを描いている”だけ”だと思われたこのシーンは、前述の取調室での二人の会話への伏線にもなっていたのだ。
「違うわ。”飛び降りようとしていたイカれ女”よ。全ての証拠がそう示していたでしょ。」
そう、女性が窓枠に立っているという見た目だけで、トムは”飛び降り”を連想していた。
だが事実はそうではなかった。
彼女は、見た目の証拠だけでは事実は分からないという事を伝えようとしているのだ。
良い脚本だと思いますよ。
どこが「最低脚本賞」なのか?
きっと、ハル・ベリーとキャットウーマンという組み合わせに期待値を上げすぎたファンの、高すぎるハードルを越えられなかっただけなんじゃないかと思います。
窮地に立たされたキャットウーマンは、果たして真犯人を見つけ出し”ビューリン”の発売を阻止する事はできるのか?
後は私のいつものセリフ。
興味を持たれた方は「評判に左右される事なく、自分の目で確かめて下さい。」
休日に気軽に観るには、丁度良い映画だと思います。
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