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『バットマン リターンズ』〜 ティム・バートン監督のダーク・ファンタジー

(Batman Returns 1992年 アメリカ)

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Catwoman

何を隠そう、(別に、隠す程のことではないが)わたしはバットマン映画の中で本作が一番のお気に入りである。


前作に引き続きティム・バートンが監督を務めた本作は、ヒーロー映画でありながらダーク・ファンタジー的な仕上がりとなっており、彼の初期の短編『フランケン・ウィニー』(1984)、『バットマン』第1作と本作の間に監督した『シザーハンズ』(1990)でも見られた、彼の「異形のモノ」への愛で溢れている。


そしてその後も、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(1993)、『ビッグ・フィッシュ』(2003)、『ダーク・シャドウ』(2012)、『 ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』(2016)と、彼はずっとその「愛」を描き続けているように思う。





奇形に生まれたが為に両親に捨てられた過去を持つオズワルド・コボルポッド=ペンギンは、サーカス・ギャング団を率いて、クリスマスに沸くゴッサム・シティ
のツリー点灯式を襲う。


彼の狙いは、式に参加していた街の実力者マックス・シュレック。


裏で手を汚しながら権力を手にしたマックスの悪事の証拠を手に入れたペンギンは、それをネタにマックスを脅し、さらには利用してゴッサムの実験を握ろうとしていた。





同じ様に名家の子として生まれながら、両親に捨てられたペンギンと、両親を殺されたバットマン。


二人は裏と表の関係の様に見えて、実は同じ様に孤独を抱えている。


親の愛を知らずに育った二人だが、一方は悪に手を染め、一方は執事のアルフレッドの教育のもと、スーパーヒーローへと成長する。


やはり、バットマンにとってアルフレッドの存在は欠かすことの出来ない大きなモノなのである。


ペンギンを演じるダニー・デヴィートは、その体型からしてペンギンはハマり役なのだが、実は前作のヴィランであるジョーカーを演じたジャック・ニコルソンとは、『カッコーの巣の上で』(1975)の共演以来の親友で、彼がデヴィートをペンギン役に推薦したらしい。





でも、本作でペンギンより悪いヤツはマイケル・シュレックの方。


自分に都合の悪い人間を排除しながら権力を手に入れ、街の電力をも支配しようとする。


ペンギンがマイケルを操ろうとする様に、マイケルはゴッサム市長を操る。


市民には表の顔しか見せず裏で悪事を働く、裏の顔で街の平和を守るバットマンとは、これまた裏表の存在である。


マイケル・シュレックを演じるを演じるのは名優クリストファー・ウォーケン。


前作のジャック・ニコルソンに続き、アカデミー賞俳優の出演となる。





マイケルの悪事に気づいてしまうのはペンギンだけではない。


彼の秘書として働くセリーナ・カイルもマイケルの計画を知ってしまうのだが、その為に彼女はビルから突き落とされてしまう。


横たわる彼女の周りに次々に猫が集まってくると、彼女に再び命が宿る。


猫の魔力で蘇ったセリーナは、自作のスーツに身を包み「キャットウーマン」として夜の街に繰り出す。


彼女の立ち位置は善とも悪とも言い難い。


彼女の目的は街を混乱に陥れる事ではなく、マックスへの恨みを晴らす事。


そのためにマックスの経営するデパートを爆破したりするので、バットマンとは敵対することになってしまう。


しかも、素顔のセリーナ・カイルとブルース・ウェインとして二人は惹かれあってしまう為、キャットウーマンとバットマンの対決シーンはちょっと切ない。


ふたりがブルース・ウェインのお屋敷でデートしている時、いい感じになって来たところで、ちょっとしたセリフでお互いの正体に気づいてしまうところが、なんかオシャレで好き。





バットマンと同じ様に表の顔と裏の顔を持つキャットウーマンことセリーナ。


そう、ペンギンとマイケルはバットマンと対照的なキャラクターなのに対し、キャットウーマンはバットマンと同類なのである。


本来であれば一番分かり合える筈の二人なのに、出会い方が悪かった為に・・・。


キャットウーマンを演じるのはミシェル・ファイファー。


ピッタリとしたラバーの衣装に身を包み鞭を振る姿は、まるでSMの女王様。


手作り衣装のつぎはぎ模様と裁縫道具を加工した爪からは、ティム・バートン監督の前作『シザーハンズ』のキャラクター、エドワードを連想してしまう。


その姿ゆえに捨てられたペンギンと、人目を避けて屋敷に暮らすエドワードの姿も重なるし、『シザーハンズ』も本作も雪がとても印象的。


色々な意味で、本作には、『バットマン』第1作よりも、更にティム・バートンの色が濃く出ている。


物語も、バットマンの活躍よりも、ヴィランであるペンギン、キャットウーマンの背景を描くことに時間を割いており、両者とも完全な悪ではなく、同情されるべき不遇の人間として描かれている。


主役であるキャラクターよりも監督の色の方が強い作品なので、特にバットマンのファンにとっては、好き嫌いが別れるかもしれない。


でもわたしは、そんなティム・バートン監督、マイケル・キートン主演の『バットマン』シリーズ2作品が大好きだ。


原作とどう違うとか、他の映画の方がどうだとか比べるものではなくて、『バットマン』と『バットマン リターンズ』は「ティム・バートンの」バットマンなのである。


ちなみに今作では、ペンギンが乗るアヒルさんの乗り物がお気に入り。


こちらの作品は、”Amazon Prime Video”、”U-NEXT”でも視聴できます。
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