『第三の男』〜 モノクロの利点を最大限に利用した映像美

(The Third Man 1949年 イギリス)
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「映画は知らなくてもテーマ曲は知っている」の代表のような映画。
そのテーマ曲も、もしかしたら『第三の男』のテーマとしてよりも、「ヱビスビール」のCM曲としての方が有名かもしれない。
英アカデミー賞で作品賞、米アカデミー賞で撮影賞(白黒部門)を受賞している。


あらすじ

親友ハリー・ライムに仕事の依頼を受け、アメリカからウィーンまでやってきた売れない作家のホリー・マーチンス。
ハリーの家を訪れると、門番にハリーは交通事故で亡くなったと告げられる。
ハリーの葬儀に参加したホリーは、イギリス軍のキャロウェイ少佐に会い、ハリーが最悪の闇売人だったと教えられるが、信じられないホリーは独自で事故の調査を始め、事故現場にハリーの友人、主治医、そして素性のわからない「第三の男」がいたことを突き止める。


感想

正直言って、映画をたくさん観てきた皆さんにとって、「第三の男」の正体につては驚きを与えるものではないでしょう。

本作で見るべきは物語の面白さではなく(つまらないとは言ってません)、その構成の巧みさと、白と黒のコントラストを効果的に使った映像美にあります。

特に、モノクロの強みを生かし、アカデミー賞撮影賞を受賞したその映像。

暗がりから現れる人物の、体が先に見えて後から顔が見えてくる描写。

建物の影に立っていて顔が見えていない人物が、反対側のアパートの部屋の灯りが着き顔が写し出される描写。

主人公を追ってくる人影が建物に大きく写し出される描写。

下水道の出口が真っ白に写し出され、そこに立つ人物のシルエットが綺麗に浮かび上がる描写など、モノクロだからこその映像美の数々。

確かに、どれも今となっては当たり前と言うか、よく見かける演出ではあるが、白黒ならではのこの美しさは、実際に見ていただかないと言葉では伝わらないと思います。


もうひとつ、わたしが本作で面白いと思ったのは、その設定。

正直、終戦直後のオーストリアがどの様な状況だったのかなんて全然知らないし、それがこの映画にどの様に反映されてるのかも分かりません。
ただ、言葉もわからない国に一人で来た主人公が、頼みの綱の友人を失い、そこに隠された真実を求めて奔走するというストーリーは、シンプルに楽しめました。

劇中、現地の人達のドイツ語のセリフには字幕が付かないので、言葉が通じず戸惑う主人公と、観ている我々は同じ立場になります。

周りの人間が、自分の顔を見ながら何か言ってるのに、何を言ってるのか解らないって、本当に恐怖だと思います。


実は、オーソン・ウェルズの代表作のイメージがあったので勝手に主役かと思ってたら、全然違ってたのが一番の驚きでした。



こんな人にオススメ

「古い」映画に「新しさ」を求めない人。

名作を模倣し、傑作を生み出すために、映画は日々進化しています。
後から作られた映画が「新しい」のは当たり前。

古典を古典として楽しめる方は、是非ご覧下さい。
逆に、「新しい」発見があるかも?

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