東西冷戦時代の東ドイツを舞台にしたアルフレッド・ヒッチコック監督のサスペンス・ミステリー。
出演は『ハスラー』、『動く標的』のポール・ニューマン、『メリー・ポピンズ』、『サウンド・オブ・ミュージック』のジュリー・アンドリュース。
あらすじ
国際物理学の学会に出席するためにコペンハーゲンに向かう物理学者のマイケル・アームストロングと、助手で婚約者のサラ・シャーマン。
コペンハーゲンに着き、書店で本を受け取ったマイケルが「ストックホルムで研究を続けたいので、コペンハーゲンで待っているように」と言い出した。
しかしマイケルの取っていた飛行機のチケットが東ドイツ行きだったことを不審に思ったサラは、密かにマイケルの後を追うのだった。
感想
ヒッチコック監督お得意の「巻き込まれ型」ではあるが、今回巻き込まれるのは主人公ではなく助手でもある婚約者の方である。
ポール・ニューマンが演じるマイケルは序盤から怪しい行動ばかりとるが、ポール・ニューマンが悪い人には見えないことから、とてもアメリカを裏切って東側に情報を売るような人間には見えない。
人は見かけによらないと言うが、これにはきっと裏があるに違いない。
一方、婚約者のサラを演じるジュリー・アンドリュースは、今までヒッチコック作品のヒロインを演じてきた金髪美女とは違って非常に普通。
金髪美女が演じるよりも、研究者っぽくは見える。
前半は、そんな怪しげな行動を繰り返すマイケルと、その真意を聞き出そうとしてもはぐらかされるサラによる静かな展開。
ちょっとヒッチコックぽくない感じではある。
それが、マイケルが受け取った本から「πと接触しろ」とのメッセージを受け取り、ある農園を訪れるシーンあたりから事態が展開し始める。
果たしてマイケルは東側に魂を売った売国奴なのか?それとも西側から送り込まれたスパイなのか?
東ドイツ側がマイケルに付けた見張り役も、マイケルを追って農園までやって来る。
サスペンスが尻上がりに盛り上がって来る。
東側の教授が発見した重要な数式を聞き出そうとするマイケルと、中々手の内を明かさない教授のやりとりも、静かな展開だが非常にスリリング。
そして、ラスト30分の東ドイツからの脱出劇は、ヒッチコックの真骨頂とも言うべきハラハラドキドキの展開。
臨時の路線バスを装った脱出者用のバス。
突然現れる敵か味方かわからない謎の女性。
『知りすぎていた男』のオーケストラのシーンを彷彿とさせる、オペラ座のシーン。
その後も二転三転し、最後まで目が離せない。
最後は、マイケルが飛行機で東ドイツに着いたシーンと被せのギャグで、ユーモアも忘れないヒッチコック監督なのでした。