(The Trouble with Harry 1955年 アメリカ)
数あるアルフレッド・ヒッチコックの作品の中でも異彩を放つコメディ調サスペンス映画。
出演は『三十四丁目の奇蹟』のサンタクロース役が有名なエドマンド・グウェン、『チャーリーズ・エンジェル』で声だけしか出てこない探偵事務所のチャーリー所長として知られるジョン・フォーサイスなど。
本作は、名女優シャーリー・マクレーンのスクリーン・デビュー作でもある。
あらすじ
紅葉の美しい小さな村の森の中で、少年が男の死体を発見する。
少年が母親を呼びに行っている間に、猟銃で兎狩りをしていた男も死体を発見、誤って人を撃ったと思った彼は死体を隠そうとするが、少年と母親以外にも入れ替わり立ち替わり人がやって来る。
実は、彼らの中には死体に心当たりのある人間も・・・。
感想
本作の魅力は、おおよそヒッチコック作品らしからぬ、全編を通して醸し出される「ほのぼの」とした雰囲気にある。
景色は美しいし、村に住む人たちは皆のんびりしている。
死体が発見されれば大騒ぎになりそうな小さな村なのに、誰も彼も妙に落ち着いているのも変に可笑しい。
でも、小さな村なのに住人たちがお互いの事をよく知らないのがちょっと謎。
しかし、「今まではよく知らなかった間柄」であるが物語のポイントになっていく。
本作の主要人物は4人。
ハリーを誤って猟銃で撃ってしまったと思っている老人ワイルズ”船長”、上品な中年女性ミス・グレイヴリー、売れない画家のサム・マーロウ、そして第一発見者である少年アーニーの母親ジェニファー・ロジャース。
この4人が上手い具合に絡みながら、その会話の中でそれぞれが「自分がハリーを殺してしまったのではないか?」と考える理由が明らかになっていく。
その度に、ハリーは地中に埋められたり掘り返されたり・・・。ホントに災難である。
原題は『The Trouble with Harry』なので、本来の意味は「ハリーによってもたらされる災難」というような意味合いになると思うのだが、邦題の『ハリーの災難』だとハリー本人が受ける災難という意味にも取れるし、実際にそういう内容になっているので、これは100点の邦題なんじゃないでしょうか。
早く死体を隠したいはずのワイルズ船長は、木陰で人がいなくなるのを待ってるうちに寝てしまうし、みんな自分がハリーを殺したと思ってる割には妙に落ち着いてるし、あげく恋愛に発展してしまったり、どこか緊張感に欠ける登場人物たち。
遂に村の保安官代理が捜査に動き出しと多少緊迫した展開にはなりますが、最後はゆる〜くハッピー・エンド。
「リアリティ」を求める人達にとっては、「そんなバカな!」と言いたくなる展開が続きますが、休日などにまったりと観るには丁度良い作品だと思います。