(Kong: Skull Island 2017年 アメリカ)
映画は1944年、ある島に戦闘中のアメリカ機と零戦が墜落するところから始まる。
無事脱出した二人のパイロットが死闘を繰り広げていると、崖下から巨大な猿のような生き物が現れる!
出し惜しみ無し。
チラチラと体の一部とか影を見せて焦らされるのかと思っていたら、いきなりキング・コングの巨大な顔面がアップで登場します。
時は流れて、アメリカがベトナムからの撤退を宣言した1973年のアメリカ。
特務研究機関モナークの一員であるランダは、自身の「巨大生物存在説」を証明する為、地質調査の名目で、人口衛星によって発見された謎の島・髑髏島への遠征を上院議員に承諾させる。
軍の護衛の許可も得たラングは、ベトナム帰還予定だったパッカード大佐の部隊を同行させることに。
この辺の件で、ジェファーソン・エアプレインとかの当時のナンバーが流れたりして、「なんか心地いいなぁ」と思いながら観ていたのだが、調査団がヘリコプターで髑髏島に向かうところで確信。
これは『プラトーン』とか『フル・メタル・ジャケット』とか、80年代にバンバン創られた「ベトナム戦争映画」のあの感じだったのです。
編隊を組んで髑髏島上空をヘリコプター飛んでいる時に流れるブラック・サバスは、『地獄の黙示録』の”ワルキューレの騎行”や『グッドモーニング、ベトナム』の"What a Wonderful World ”を彷彿させます。(『地獄の黙示録』は1979年製作ですが)
ブラック・サバスをバックに、プロペラの動きまで見えるスーパースローで撮影されたヘリコプターの編隊飛行を、真上から真下からと様々な角度から魅せてくれる映像に酔いしれていると、突然前方から何かが飛んで来る。
次の瞬間、ヘリの操縦席に突き刺さる。
それはなんと、ゴングが引っこ抜いて投げつけてきた「木」だったのだ!
「なんと」とか言いながら、「木」って言っちゃうとショボく聞こえるけど、結構しっかりした「木」ではあるけど「大木」って程じゃないし、言葉じゃ巧く伝わらないので実際に見ていただきたい。
ブラック・サバスからの落差と言うか、急転回がわたし的には大好きなシーンではあります。
ここでもコング様は、その御姿を出し惜しみすることなく、十機あまりのヘリを相手に大立ち回りを繰り広げます。
このシーンの演出が、ヘリ内部からの映像を駆使して、コングに振り回されてる時には背景がグルグル回ったり、毛むくじゃらの背景が徐々に下がって行って、やがてコングの顔が現れるとこちらを覗いているといったような、まるでテーマパークのアトラクションの様な、「キングコング・ザ・ライド」って乗り物があったらそのまま使えそうな映像で楽しませてくれる。
アメリカ兵達がバンバンやられてるのに「楽しい」って言い方は不謹慎かもしれないが、もうそんなの超越しちゃうぐらいの力の差でプチプチとやられちゃうので笑うしかないって感じです。
開始30分で壊滅状態の調査隊。
移動手段を失った人間達は、三日後に本隊の船からヘリコプターが迎えに来る地点へと向かう為ジャングルの中を進むのだが、この島にはコング以外にもまだまだ恐ろしい生き物が・・・。
もうそうなってくると、この島のジャングルはベトコンが潜む『プラトーン』のジャングルよりも恐ろしい。
このジャングルを進んで行くってところも、ベトナム戦争映画を連想させるのかも。
いつ、どこから、何が襲って来るかわからないドキドキな状況で物語は進む。
雰囲気は戦争映画の様でもあり、嘗ての冒険活劇映画の様でもある。
ジェファーソン・エアプレイン、ブラック・サバス以外にも、クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルやデヴィッド・ボウイなどの’60年代後半から’70年代前半のナンバーが全編を彩っており、全体の雰囲気と楽曲だけでもどんぶり飯3杯いけるほど、おじさんにはとっては”たまらん”映画なのです。
冒頭のシーンで、日本が誇る天才ギタリスト”MIYAVI”が零戦パイロットの役で出演しているのも見どころの一つだが、個人的には、コング様がサミュエル・L・ジャクソンに対して「言わせねぇよ!」とばかりに強めにツッコむところが好きです。
それにしても、ポイ捨てタバコをきっかけに爆発が起きて「ガスが出てるぞ!」とか言いながら火炎放射器を振り回すのはどうかと思うゾ。