yakkunの趣夫生活

人生で大切なことは、全て映画が教えてくれた。

『見えない目撃者』〜 感想(ほぼ)ネタバレなし 〜 突っ込みどころに「目を瞑れば」極上のサスペンス・エンタテインメント

(2019年 日本 R15+)

見えない目撃者 (小学館文庫)



2011年の韓国映画『ブラインド』を元にした、2015年の中国映画『見えない目撃者』に続く、二度目のリメイク作。
視力を失った元警察官が巻き込まれる連続殺人事件を描く。
主演は吉岡里帆、共演に高杉真宙、大倉孝二、田口トモロヲなど。
監督は映画『重力ピエロ』や、レミオロメン『3月9日』のMVを撮った森淳一。

あらすじ

警察学校を卒業した浜中なつめ(吉岡里帆)は、弟を車に乗せ自宅に向かう途中事故を起こしてしまい、弟を死なせたうえ自身の視力も失ってしまう。
事故から3年が経ったある日、なつめは夜道を歩いているときに車の接触事故に遭遇し、その車の中から助けを求める少女の声を耳にする。
警察に誘拐事件の可能性を訴えるが、もう一人の目撃者である国崎春馬(高杉真宙)の「少女はいなかった」という証言により捜査は打ち切られてしまい、なつめは自分で春馬から話を聞くため会いに行く。

感想

無国籍感がたまらない

韓国映画のリメイクだからなのか、韓国のサスペンス映画や、一昔前の香港映画(と呼ばれていた頃の)空気を感じた。
ロケ地にしても、敢えて日本ぽくないところを選んでるように感じました。「負のオーラ満載」のマンションとか。
劇中に出てくる「長者町警察署」も何県なのか不明だし。(横浜に同名の地名があるようですが)
地下鉄を走ってるのは京成線の車両だし。なので東京近郊だとは思いますが。成田も出てくるし。
ただ、あえてランドマークの様なものは映らない様にしてたのではないだろうか。

でも、この「どこだかわからない」感が、『挽歌』シリーズのころのジョン・ウー作品の様な無国籍感を漂わせ、この映画には良い方に作用していたと思います。

演者の魅力

当然、全体の雰囲気だけでなく、ツボを押さえた主演者たちの配役も良かったと思います。

昔気質で自分の勘を信じるベテラン刑事の田口トモロヲさんと、面倒くさい事はやりたくない部下の大倉孝二さんなんて、イメージ通りすぎるかもしれませんが、ここで意外性のある配役だと話がぶれて集中できなくなるので適役だと思います。

高杉くんの、最初はあまり協力的じゃないけど、自分のせいで少女の身に危険が迫ってるかもしれないと気づいてからの、若さ溢れる頼れる感もとてもイイですね。

しかし、何と言っても本作の殊勲者は主演の吉岡さんでしょう。
目を開けたまま見えてない演技をするのって、絶対大変でしょう。
だって、本当は見えてるんだから。反射的に反応しちゃう事だってあるだろうし。
階段を駆け下りる途中で一回つまずくところなんて、リアルすぎてハラハラしちゃいました。

そして忘れちゃいけないのが、盲導犬を「演じた」パルくん。
本職は盲導犬ではなくて俳優犬とのこと。
見事に盲導犬を演じてました。だって、ずっと吉岡さんに指示に従ってて、本物の盲導犬だと思って観てたもん。
癒されます。

目を瞑る事も必要

ただし、色々な人のレビューの中で高評価をしている人も言っている様に、突っ込みどころが多いのも事実。
冒頭の事故で吉岡さんを助け出したトラックの運転手、弟くんも助ける時間あったでしょとか。
失明して三年で、そんなに順応できるものなの?とか。
犯人のアジトでは、もう少し静かにしましょうとか。
警察の応援、遅すぎない?とか。
まだあるんですが、ネタバレになるものは避けておきます。

どうかそこは「目を瞑って」、映画を楽しんでいただきたい。
『見えない目撃者』だけに。
お後がよろしいようで。

じゃなくて、その話を少しさせてもらうと、元々わたし自身が突っ込みどころをスルーする能力が高い(という自負)ということもあるんですが、以前、「シネマ・ウォッチ超人」こと宇多丸さんのラジオ番組で、映画監督で脚本家でもあり、脚本のお医者さんとも言える「スクリプト・ドクター」という仕事をされている三宅隆太さんが、その仕事についてお話しされたときのことです。
その中で「物語の本筋を生かすために、敢えて小さな穴に目を瞑ることがある」みたいな事を仰ってて、「素人が思いつく様なアイデアは、当然プロは早い段階で出るけども、それを選択しないという選択をする」というのを聞いて、「そりゃ、そうだ」と納得し、わたしの「スルー能力」は、また一段上がったのでした。

映画がもっと好きになれるので、皆さんも是非試してみてください。

結果、気に入ったので続編希望!

そんなわけで、本作も大変楽しませて頂いたわたしは、「盲目の女シャーロック・ホームズ」浜中なつめと「スケボーに乗ったワトソン」国崎春馬の新作が観てみたいと思うほど、この映画が気に入ってしまいました。


大倉孝二さんの「警察官が正義の味方だってところを見せてやる」ってセリフに胸熱!
こういうのが一個でもあると、映画の評価が又グッと上がります。

こんな人にオススメ

『殺人の告白』『オールド・ボーイ』『母なる証明』など、韓国サスペンスが好きな方。
ただし、前述した様な突っ込みどころに引っ掛かっちゃうと本筋を楽しめなくなるので、あなたの「スルー能力」をフルに発揮してください。


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