(Death Wish 2018年 アメリカ R15+)
1974年にチャールズ・ブロンソン主演で制作された『狼よさらば』のリメイク。
脚本は『スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい 』『特攻野郎Aチーム THE MOVIE 』『THE GREY 凍える太陽』などのジョー・カーナハン。当初は監督も担当する予定だったが、最終的に『ホステル』『グリーン・インフェルノ』『ノック・ノック』のイーライ・ロスが監督。
主演は、ご存知ブルース・ウィリス。
あらすじ
外科医のポール・カージーは、犯罪の多発する街シカゴで、犯罪に巻き込まれた人たちの緊急手術に追われる毎日だが、愛する妻、娘と幸せな日々を送っていた。
だがある日、ポールの留守中に自宅に強盗に入られ、妻は殺され娘も意識不明の重体に。彼の生活は一変する。
感想
リメイク作品であるが、「妻を殺された男が、一人自警団となり復讐を果たす」というプロットこそ一緒だが、後はほぼ別物。
まず主人公の設定が設計士から外科医に変更させており、これが良い方向に作用していると思いました。
冒頭、銃撃戦により負傷した警官と犯人がポールの病院に運び込まれてくる。
胸に銃弾を受けた警官の死亡を確認した後、犯人の手術に向かうポール。
「まさか、犯人の命を救うのか?」別の警官がポールに問いかける。
「できればね」とポール。
このシーンで、ポールのひととなりが示される。彼は、命に優劣をつける人間ではない。
そんな彼を復讐に駆り立てるものとは?
外科医である設定は他の場面でも生きてくる、ポールが家族を襲った犯人グループから情報を聞き出すための「イーライ・ロス的」拷問のシーンだったり、ポールが自分で自分の怪我の治療をしたり。
2006年に、シルベスター・スタローンが『狼よさらば』のリメイクを企画していた時は、主人公を「訓練以外で拳銃を使った事のない警官」しようとしていたらしく、これはこれで面白くなりそうである。
非常に良くできた映画なのに、なぜヒットに結びつかなかったのだろうか?
イーライ・ロス的残酷描写のせいでR指定になってしまったから?
オリジナルの『狼よさらば』はもちろん、チャールズ・ブロンソンを知っている世代が歳をとってしまったから?
わたしが考える理由はふたつある。
ひとつは主演のブルース・ウィリス。
と言っても、彼の演技が悪いわけではない。
ただ彼のイメージが、完全に「やってくれる男」になってしまっているのではないかと思います。
『ダイ・ハード』のころ、ブルース・ウィリスのイメージは『こちらブルームーン探偵社』のデイヴィッド。
ちょっと頼りない男が頑張る姿に共感が持てたのに、『ダイ・ハード』もシリーズを重ね、『アルマゲドン』あたりで完全に「頼れる男」になってしまいました。
本作でも、銃を使ったことのないポールが、偶然手に入れた拳銃の扱いをネットの動画で学んだりするんですが、ちゃんと扱えるようになってからの方がしっくりくるというか、扱えないことの方に違和感を感じるというか・・・。
脚本のジョー・カーナハンが監督も兼任する予定だった時は、リーアム・ニーソンかフランク・グリロの出演を検討していたそうで、確かにその方が「普通の人」っぽい。
もうひとつは、相次ぐ銃乱射事件によってつくられた、映画やゲームにおける「銃」や「暴力」の扱いに対する風当たりの強さ。
実際、人間が映画やゲームからどれほどの影響を受けるものなのか?
心を豊かにする以外に、善悪の基準を変えてしまうほどのものなのか?
それは、最初からその人の中にある要素によるものではないのか?
西部劇での発砲は「ファンタジー」的に捉えられても、舞台が現代だとリアリティが増してしまうのだろうか?
本作の公開直前にも、フロリダ州の高校で銃乱射事件が発生。
監督のイーライ・ロスも「銃社会を讃えたかったわけではない」と釈明することに。
大多数の人間は、「リアル」と「フィクション」の区別ぐらいつくと思うんですけど。
わたしはアメリカの銃社会の中で生きているわけではないので、完全に彼らの気持ちになることはできませんが。
そんなわたしは、本作も「ファンタジー」として、「非リアル」な物語として楽しませていただきました。
「スッキリ爽快」にカテゴライズしたのは、家族の仇を討つ男の物語としての評価です。
決して「銃社会を讃えたかったわけではない」のでご容赦を。
ラスト・カットのブルース・ウィリス、めっちゃカッコイイ。
こんな人にオススメ
ブルース・ウィリスの爽快アクションが好きな方。
なおかつ、イーライ・ロスの「痛い」描写に耐えられる方。
こちらもオススメ
オリジナルの『狼よさらば』と同時代に制作された、骨太アクションシリーズ。
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