『女王陛下のお気に入り』〜 世にも奇妙な女の戦い

(The Favourite 2018年 アイルランド・アメリカ・イギリス PG12)
女王陛下のお気に入り (字幕版)



18世紀のイングランドを舞台に、アン女王の寵愛を奪い合う二人の女性の攻防を描く。

監督は『ロブスター』、『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』のヨルゴス・ランティモス。
出演はオリヴィア・コールマン、エマ・ストーン、レイチェル・ワイズ、ニコラス・ホルトなど。
コールマン、ワイズがランティモス監督作品に出演するのは『ロブスター』以来2度目。

ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞(審査員大賞)、主演女優賞受賞。
オリヴィア・コールマンは、他にもアカデミー賞、ゴールデングローブ賞、英アカデミー賞など多数の映画賞で主演女優賞を獲得。


あらすじ

アン女王の親友であり側近でもあマールバラ公爵夫人サラ。彼女のコネを頼って従妹のアビゲイルが宮殿を訪れる。

女中として働き始めたアビゲイルは、そのしたたかさで次第に自分の地位を得ていく。

感想

『籠の中の乙女』、『ロブスター』、『聖なる鹿殺し』と、毎度毎度わたしを困惑させながらも魅了するヨルゴス・ランティモス監督。

今回は彼のオリジナル脚本ではなく史実に基づいた物語なので「普通」の映画かと思いましたが、やっぱりどこか不思議な映画でした。

彼の他の作品に比べれば「普通」ですが。



まず「貴族のお遊び」が摩訶不思議。

アヒルにレースをさせたり、裸の男に寄ってたかってフルーツ(?)をぶつけたり、おまけに舞踏会でのダンスの振り付けは「ギャグですか?」ってぐらい奇妙なステップで笑ってしまいます。

それとも庶民であるわたしに、理解出来ないだけ?


そして本作でも、おおよそ音楽とは呼べないノイズのようなBGMは健在です。

緊張感を煽ってくるというか、何か不安にさせられます。


奇妙と言えば、使われている衣装も奇妙でした。

中世ヨーロッパの貴族と言えば、ド派手な衣装が付き物だと思っていたのに、本作に出てくるそれは殆どが白と黒のモノトーン。

デザインは豪華なので途中まで気付かず観ていましたが、一度気付くと気になって仕方がない。

どんな効果があるのかと考えながら観てましたが、わたしにはそこまでの考察力はありませんでした。残念。



物語の大半は宮廷の中だけで進み、その中心になるのは三人の女性。

多くの主演女優賞を受賞したオリヴィア・コールマンの演技は言うに及ばず、彼女を巡って争う二人を演じたエマ・ストーンとレイチェル・ワイズも素晴らしかった。

ストーリー的には、トリプル主演と言っても良いぐらい.


序盤では、いじめにも耐えながら出世してゆく成長物語かと思わせといて、徐々に腹黒いしたたかさを見せていく、エマ・ストーン扮するアビゲイル。

親友である王女の為か、権力を影で操る快感に酔っているのか、はたまた私利私欲の為か、最後までその真意が計り知れないレイチェル・ワイズ扮するサラ。

心身ともに病んでおり、一人では何も出来ないが、その言葉には誰も逆らうことが許されない女王のアン。

三人の愛憎渦巻く心理戦とも言えるやり取りは、最後まで緊張が途切れることはありません。



ラストは、どこか虚しく、なんとも言えない余韻が残ります。

アン女王の一番の理解者、側近、親友、そして恋人はサラだけだったのかもしれません。



こんな人にオススメ

『エリザベス』『マリー・アントワネット』などの歴史ドラマが好きな方はもちろん、ランティモス監督の過去作のような、ちょっと変わった映画が好きな方にも満足いただける映画だと思います。

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