『ドラゴン桜』で知られる漫画家、三田紀房の同名漫画を原作とし、『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズや『寄生獣』の山崎貴が監督を務め映画化。
主演は『帝一の國』『あゝ、荒野』などの菅田将暉。
共演に『きみの鳥はうたえる』『火口のふたり』の榎本佑、『君の膵臓をたべたい』『屍人荘の殺人』の浜辺美波ほか、笑福亭鶴瓶、小林克也、小日向文世、國村隼、橋爪功、田中泯、舘ひろしなど。
あらすじ
1933年、欧米諸国との対立を深め国際的に孤立し始めた日本は、来るべき戦争に備え軍備拡張を進めていた。
だが、「これからの戦闘の主力は航空機だ」と航空母艦の建造を主張する山本五十六(舘ひろし)と、巨大戦艦の建造を主張する嶋田繁太郎(橋爪功)の対立は平行線をたどるが、平山忠道(田中泯)が持ち出した戦艦の大型模型に感嘆した大角岑生大臣(小林克也)の心は戦艦建造に傾き始め、結論は半月後の会議に持ち越される。
しかし戦艦の建造予算の見積もりが低すぎる事を不審に思った山本は、自分たちで計算をやり直し、嶋田たちが話を有利に進める為に虚偽の見積もりを出した事を証明しようとするが、二週間では膨大な量の計算をするのに時間が足りない。
そこで山本は、偶然知り合った天才数学者、櫂直(菅田将暉)に白羽の矢を立てる。
感想
史実がどうであったのかとか、どの程度創作なのかは分からないので、そこは考えずに単純に映画として面白い。
あと原作も未読なので、そこの比較もしてません。
冒頭、いきなりのクライマックスとでも言うべき戦艦大和対アメリカ戦闘機部隊の戦闘シーンからの大和轟沈で度肝を抜かれる。
特撮はCGよりもミニチュア派のわたしですが、このシーンは痺れました。
映画館の大スクリーンで観なかったことをちょっと後悔。
ハエのように群がる戦闘機に、大和も機銃の一斉掃射で対抗するが殆ど効果がない。
ここの銃座操作の描写も凄い。
射撃方向を支持する者、上下の角度を操作する者、左右の方向を操作する者、弾丸を発射する者、弾丸を装填する者。
これだけ多くの者の手で操作し多くの弾丸を発射し、その機銃を何十機と並べても敵の戦闘機は中々落せない。
一方、敵の魚雷や爆弾は次々と命中する。
最早、力の差は歴然。
ほぼ何も出来ずに戦艦大和は沈められ、3000人もの乗組員の命が失われた。
オープニングのこの映像で、この映画はこの悲劇を避けようと戦った男の物語だと知らされる。
そして物語は13年前に遡り、山本五十六の口から「これからは航空機の時代」だと聞かされると、我々は同意せざるを得ない。
たった今、来るべき未来の悲劇を見せられたばかりなのだから。
しかし実際「戦艦大和」は建造された。
その事実を知りながら、それを阻止しようと奮闘する男たちの物語を観るのは複雑な心境にさせられる。
だが、オープニングの悲劇を見ている我々は彼らを応援せずにはいられない。
冒頭にこの「クライマックス」を持ってきたのは大正解!
菅田将暉扮する櫂直(かいただし)が山本五十六に手を貸す為にチームに加わってからは、榎本佑が演じる田中と櫂のバディ・ムービーの様になる。
根っからの軍人である田中と、数学の事しか頭になく軍人嫌いの櫂のデコボコ・コンビっぷりは見ていて楽しい。
しかも、田中少尉を飛び越えて、いきなり櫂に少佐の階級が与えられると、そのチグハグ感に拍車が掛かる。
「そんな事ありえないだろ」と思いつつも、非常に「映画的」で面白い。
そんな二人が、二週間という制限時間の中で同じ目的に向かって徐々に息が合っていく過程を見るのは気持ちがいい。
「戦艦派」からの数々の妨害を乗り越えながら「本当の見積もり額」に近づく二人。
最後の山場となる「最終決定会議」の最中まで「見積もり」の計算は続く。
果たして間に合うのか・・・。
この終盤に来て、今まで大人しかった田中泯の燻銀の演技が光り出します。
舘ひろしより田中泯の方が山本五十六のイメージだなぁと思いながら見ていたわたしは、ここの来て田中泯が平山中将にキャスティングされた理由を理解した気がした。
終盤の田中泯が非常に良い。
静かな話し方なのに、物凄い重みがある。マジで鳥肌が立った。
逆に、山本五十六は舘ひろしが演じる事で「人間味」が出たと言うか、庶民っぽい感じが新しいのかと感じた。
決して館さんをバカにしているわけではなく、山本五十六と言うとどうしても三船敏郎や小林桂樹のイメージが強いもので、比べちゃうとちょっと・・・。というだけの話です。
史実通り戦艦大和は建造される。
9年後、完成した大和の艦上で視線を合わせる櫂直と山本五十六。
ふたりの胸中や如何に。
埠頭から大和を見つめ「あの船が日本という国そのものに見える」と涙する櫂に対し、部下が「そうですね」と同意するが、その意味するところは真逆である。