(증인 INNOCENT WITNESS 2019年 韓国)
弁護士とは大変な仕事である。
自分が信じる正義とは関係なく、依頼人を守るために全力で弁護をしなければならない。
本作を観て、一番最初に浮かんだ印象はそんな事だった。
そう言えば『リーガルハイ』の古美門先生も、依頼人が悪だと分かっていても全力で弁護していたが、あれはお金の為にやっていた訳で彼の中では正義という事で、特に苦しんでいなかったっけ。
ニュースなんかで、通り魔犯の弁護士が心神喪失を理由に減刑を請求していたりするの見るたびに、一体どんな思いで弁護しているのかと疑問に思う。
本作の主人公である弁護士のスノは、世渡りが上手いタイプの人物ではないようである。
44歳にして独身、出世にも縁がなく、同居している父の借金を返すのに四苦八苦している。
その父が借金を作った理由も、次々に友人の保証人になって出来たものらしいので、この性格は遺伝のようである。
そんな彼に、事務所の代表から出世の掛かった案件が任される。
それは、ある老人の殺人事件で、容疑者となっている依頼人の家政婦は、彼は自殺で自分は助けようとしていただけだと主張。
唯一の目撃者は、事件現場の隣の家に住む自閉症の少女ジウ。
スノは、ジウを証言台に立たせ彼女の証言に信憑性がない事を証明しようと彼女に近づくが、まともにコミュニケーションをとる事も出来ない。
なんとかジウの心を開かせようとあれこれ努力を続けるうちに、スノのジウ、自閉症というものに対する考えが変わって行き・・・。
ジウを演じる、ちょっと歌手のIUさんに似ているキム・ヒャンギさん。
自分の周りには自閉症の方はいないので、あくまでもイメージとの比較でしかないのですが、自閉症の演技がとても上手だと感じました。
『ギルバート・グレイプ』のレオナルド・ディカプリオ、『カーラの結婚宣言』のジュリエット・ルイス、ジョヴァンニ・リビシなど、若くして難しい役を演じきられると今後が非常に楽しみになります。
主役のスノを演じるチョン・ウソンさんは、ちょっと失礼な言い方かもしれませんが、地味で目立たない感じが役にあってると思いました。
弁護士なのにエリートっぽさがなく、うだつの上がらない感じがよく出ていたと思います。
意図したものでなかったら申し訳ないですが、個人の感想なのでご容赦を。
そんな二人が、恋愛的にでもなく、擬似親子的な感じでもなく、徐々に心を通わせて行く過程がとても微笑ましい。
物語のメインは、事件の真相と裁判の行方なのだと思いますが、映画のテーマは二人の心の交流と主人公の心の変化の方だと思います。
裁判を有利に進めるために利用しようと検察側の証人近づいた容疑者の弁護人は、交流を重ねて行くにつれ何を思うのか?
知らないおじさんを警戒していた自閉症の少女は、自分の理解者となってくれた弁護士の叔父さんのために証言台に立つのか?
裁判の行方も気になりますが、主人公と父親、裁判で争う新人検察官、そして大学時代に同級生だったバツイチ女性との恋の行方と、人間ドラマも盛り沢山。
期待を裏切らない、中々の良作でした。