『菊とギロチン』〜女相撲とアナキスト

(2018年 日本 R-15)
菊とギロチン




『64-ロクヨン- 前編/後編』、『友罪』の瀬々敬久監督が30年間温め続けた企画を、クラウドファンディングにより集めた資金で映画化。

大正末期に実在したアナキスト集団「ギロチン社」と、女相撲の力士たちの青春を描く。

出演は木竜麻生、韓英恵、東出昌大、寛一郎、渋川清彦、井浦新ほか。


あらすじ

関東大震災直後の日本は、軍部が力を強め自由な空気は失われつつあった。

ある日、東京近郊に女相撲の一座が興行に訪れ、その中には旦那の暴力から逃げるために一座に加わった花菊もいた。

そんな女相撲を観戦に来ていた、平等な社会を目指し、革命を訴える「ギロチン社」の面々。

女力士の戦う姿に魅せられたメンバーたちは、彼女たちと行動を共にするようになる。



感想


構想30年を掛けた瀬々監督の、熱い思いが詰まった3時間でした。


個人の自由を求めて戦う女たちと、政治的な自由・平等のために戦う男たち。

理由は違えど、現状を打破しようともがくお互いに共感し、惹かれ合う。


登場人物たちの熱量と、監督の熱い思いの相乗効果で激アツの展開が・・・とは、何故かならない。

むしろ、物語は淡々と語られていく。

大事件が起こるわけでもなく静かな展開が続く割には、3時間という上映時間も長く感じる事もなく、一気に観ることが出来ました。

それは多分、この映画が大正時代の日本を描いているように見えて、実は現在我々が暮らしているこの社会にも通ずる問題点を描いているからではないだろうか?


女性蔑視にDV、人種差別。100年前から我々は全く進歩していない。


政治に対する不満を叫び、理想を唱えながらも具体的な行動には移れない、東出くん演じる中濱。

映画の登場人物として見ていると「ダメな奴だなぁ」と思ってしまうが、彼の姿は、増税や政治家の不祥事に文句を言いながら特に何もしない我々の事なのではないかと思ってしまう。


お色気的ハプニングを期待して見に行った女相撲で、女性力士たちの熱い本気の戦いに夢中になっちゃうくだりとか、いかにも「男」的なエピソードで好きです。


本作での、女相撲とアナキスト集団の出会いは創作された話であるが、当時実際に彼らが出会っていたらどんな化学反応が起きていただろうと、色々想像してしまいます。



こんな人にオススメ

長尺の作品ですが、ハマれば長さは感じません。

逆に、起伏の少ない演出に長く感じる方もいらっしゃるようです。

「こんな作品です」と一言で言えずにもどかしいのですが、ハマるかハマらないかはあなた次第です。

菊とギロチン

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